【歴メシを愉しむ(54)】
新茶で美味しく楽しむお家時間

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.05.13

風薫る五月、新茶の季節を迎えた。引き続きの「美味しく楽しむお家時間」には最適のアイテムではないか。しかも新茶は、このご時世に嬉しい、長寿の縁起物なのである。早速、新茶とあれこれ美味を味わうほっこりお家時間を楽しもう。

 

新茶は長寿の縁起物

新茶は八十八夜に摘まれた一番茶で作った煎茶のこと。「八十八夜」は雑節の一つで、立春から数えて八十八日目にあたる(今年は5月1日)。この日に摘まれた茶葉で淹れたお茶を飲むと、「長寿」「無病息災」でいられるという縁起物だ。立春から八十八夜という、まさに春の気が満ち溢れた時に育まれたお茶には、新しい季節が持つ生命力が詰まっているからだろう。

この八十八夜の茶摘みを歌った「♪夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘みぢやないか あかねだすきに菅の笠~♪」

幼い日に口ずさんだこの唱歌には、のどかな日本の初夏の光景までもが蘇るようだ。

 

心の中に薫風がわたるがごとく

新緑を思わせる青く爽やかな香りと、淡い渋みを含む甘みが美味な新茶。まずは、すがすがしい香りを愛でて、みずみずしい雫をゆっくりと味わうこと。

グラグラに沸騰させたお湯を湯呑みに入れて少し冷ましたら、たっぷりの茶葉が入った急須に移し、蓋をして1分ほど蒸らして、湯呑みにゆっくりと注ぐ。新茶の青い香りが飛ばないよう、お湯はあまり冷まし過ぎないように(茶の銘柄により細かいこだわりがあるのでご参照の上、どうぞ)。

この時、お茶の旨みが凝縮しているとされる最後の一滴まで注ぎきることが肝要だ。

 

新茶の友 まずは王道の和菓子で

次いで待っているさらなる楽しみが、新茶と楽しむお茶の友である。

まずは王道の和菓子。昔から「茶菓良友」という言葉があり、「良いお茶を引き立てるものは良い菓子であり、良い菓子には優れたお茶が欠かせない」という意味で、茶と菓子は互いを引き立て合う良き友なのだ。

これには「上生菓子」と呼ばれるきんとんやこなしの生菓子が挙げられるが、この時節には美しい薄紫色の「あやめ」や「杜若(かきつばた)」が代表的なものだろう。他にもお茶を使った棹物や和風ゼリーなども嬉しい良友である。

 

梅干、茶漬、大阪ずしで新茶三昧

和菓子以外にも食事として楽しめる、私が好きな新茶の友をご紹介したいと思う。

昔からお茶には効用があるとされ、中国から茶種と製茶技術を日本に伝えた臨済宗の開祖・栄西は、『喫茶養生記』(1211年)の中で、「茶は養生の仙薬、延齢の妙術なり」と説いている。それゆえ昔からことわざに登場することも多く、「朝茶はその日の難のがれ」や「朝茶に梅干は長寿の知恵」などがある。このことから、朝食の時には蜂蜜を加えて漬けた酸味控えめのまろやかな梅干をお茶請けにするのもよい。しかも長寿の縁起物の新茶と合わせるとダブル長寿となるから心強い。

かの美食の大家・魯山人は、茶漬へのこだわりも相当なものだった。いわく、「茶漬のお茶は煎茶に限り、煎茶の香味と苦味が入用で、少し濃い目のお茶をかけると調和がとれる」という。また大家は、自身が好きな茶漬の具をさまざま挙げており、その中から現状況下の元気UPにも良い栄養豊富な鰻や穴子、納豆などを、旨みが強めの新茶を選んで、濃い目に淹れて、美食家の茶漬を楽しみたい。

そのほか新茶の友のご飯ものとしては、箱寿司や茶巾ずしなどの伝統の大阪寿司もおすすめしたい。上品で奥行きのある味わいが、新茶の清々しい香味と好相性だ。

ああ、新茶がもたらしてくれるお家時間の豊かなテーブルに至福満腹~!と幸せに浸っていたら、このようにあれこれの茶友と楽しむ新茶三昧を戒めるかのごとき一句を見つけたので、締めくくりにそっと記しておきたい。

「点心はまづしけれども新茶かな」―芥川龍之介

歳時記×食文化研究所

北野智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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