【歴メシを愉しむ(83)】干柿は忍者のおやつ食だった?

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.10.25

秋深まり、柿の出番である。ことわざに、「柿が色づくと医者が青くなる」とあるように、柿はカロチンやカリウム、ビタミンCを多く含み、風邪の予防にもよいとされ、渋みのもとのタンニンがアルコールを分解してくれるので、私のような酒呑みにはありがたい。きらびやかなフルーツ界では地味な存在だが頼もしい、日本を代表する果実だ。

その柿を天日干しした干柿はさらに私の好物で、時季になるといつもバッグに数個忍ばせておき、小腹が減った時の秋のヘルシーなおやつとして食べている。

 

小泉先生に教わった干柿の美味

この干柿おやつを教わった御仁は、何を隠そう敬愛する小泉武夫先生。かつて私のクライアントである百貨店へ食文化のご講演のために何度か来阪していただいた折、控室で小休憩の時、小泉先生が鞄の中から取り出されたのが、なんと干柿。ご講演やご指導のため日本全国を飛び回られている先生、移動の新幹線などで小腹が減った時に、干柿を食べられるのだという。鞄の中にぎっしりと詰められた文献や本、資料と干柿とのギャップに思わず笑ってしまった。

それまで長く干柿を口にしていなかったが、いただいた干柿はとろりと甘く、まるで果物ゼリーのような美味に感動し、以来、秋から冬にかけて私のバッグには干柿が入っている。

 

忍者も癒されたであろう干柿の甘み

東アジア原産とされている柿は、奈良時代にはすでに日本で栽培されていたという。果樹としての柿が最初に文献に登場するのは平安時代中期に編纂された『本草和名(ほんぞうわみょう)』(918年)で、その10年程後に成立したとされる『延喜式』(927年)には、干柿として利用されていたことが記されている。現代の干柿は主に果菓として食されているが、砂糖がなかった時代には甘味料として重要なものだったようだ。

私の干柿好きの理由には、忍者好きということも関連している。なぜか干柿を食べると忍者になったような不思議な高揚感に包まれる(笑)。それはきっと古くから保存食として伝承されてきた干柿は、日持ちもよく携帯食としても重宝するため、きっと忍者も食べていたに違いないと思うからだ。

よく知られている忍者の食は、干し飯や大豆、ごま、するめ、かたやきなどのほか、1日に数粒食べると飢えや渇きが抑えられるという、兵糧丸(そば粉、はと麦、ごま、はちみつなど)、飢渇丸(きかつがん/朝鮮人参やかんぞう、ユキノシタ、山芋など)、水渇丸(すいかつがん/梅干と砂糖)などがあるが、どれも味気無さそうなものばかり。そこへいくと、栄養価も高く、果糖やぶどう糖が白い粉となり表面を覆っている干柿は、しっとりとして菓子のように甘く、諜報活動や戦で疲れた心身を癒してくれたに違いない。

そんなことを想像しながら、池波正太郎著『真田太平記』に出てくる憧れのくの一(女忍び)・お江になった気分で 干柿をかじるのも、気分である。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

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