今年の「冬至」は12月21日。一年で昼の長さが最も短く、夜が長い日で、太陽の光が弱々しく感じる。「冬に至る」と書くので、冬の間で最も寒いと思われがちな「冬至」だが、「冬至冬中冬始め」ともいわれるように、実はまだ「冬の真ん中」で、「冬の寒さ始め」ということである。この寒さでまだ始めか?と嫌気をさしてしまうが、立冬から立春前日(=節分)までが冬なので、「冬至」はちょうどその真ん中である。「冬の至り」へ向けての出発日であり、これから本格的な寒さがやってくる。
柚子湯で温まる冬至の湯治(とうじ)
実家の近くには銭湯があり、幼い頃 冬のある日に行くと、湯船の中には半分にカットした柚子がどっさり入った大きなネット袋があちこちにプカプカと浮いていた。冬至の風習など知るはずもなく、「わ~っ、これ何ぃ~!」と、キャアキャア歓声を上げて、湯船の中でその袋を友達と取り合ってはザンブサンブと暴れていた。迷惑この上ないガキたちであったが、そこで「冬至の柚子湯」というものを知ったのだから、日本の伝統行事を学ぶ上で必要なことであったのだろう。(笑)
冬至に柚子湯に入ると、邪気を祓い、一年間は無病息災で過ごせるという言い伝えがある。精油成分を多く含む柚子は、その香りが身体を清め、血管を拡げ身体を温めてくれるので風邪の予防にもなるという。まさに「冬至の湯治」で、1838(天保9)年に刊行された『東都歳時記』に、「銭湯で流行しはじめた」と記されている。私は冬至だけでなく、柚子の皮を椀物などの吸い口に使い、それ以外の部分は刻んでさらし袋に入れて湯船に浮かべ、冬の間中、柚子湯に入っている。
誰と誰がいとこなのか?
冬至の行事食といえばかぼちゃで、この日に食べると厄除けや長生きをする、中風封じになるなどといわれている。「冬至かぼちゃ」と呼ばれ、冬の貴重なビタミン源として食べられてきた。かぼちゃは「南瓜(なんきん)」とも呼ばれ、人参、大根、蓮根、きんかんなど、冬至に「ん」のつくものを食べると運気がつく、風邪を引かないとも。また その赤い色が邪気祓いとされる小豆も「冬至粥」などで食されてきた。かぼちゃと小豆を甘めの味付けで煮たものは「いとこ煮」と呼ばれ、冬至に食べる習わしが各地にある。
この「いとこ煮」というユニークな名前、誰と誰がいとこなのか?という疑問が生じるが、これには諸説あるらしい。
現在の「いとこ煮」は一般的に、小豆または大豆と野菜の寄せ煮料理で、味噌仕立てや醤油仕立てのものを指すようである。江戸時代前期に刊行された『料理物語』には、「あづき、牛房(ごぼう)、いも、大こん、とうふ、やきぐり、くわいなど入れ 中みそにてよし。かやうにをひをひ煮申すによりいとこ煮か」とある。なるほど、「をひをひ煮申す」=「甥甥煮るから従兄弟煮」というわけである。一方、別な説を唱える根拠となっているのが、江戸時代以前のいとこ煮の祖形と思われる「いとこ煮」が記されている、室町時代後期の国語辞書『伊京集』。そこには、「従子(いとこ)煮、大豆小豆汁」とあり、つまり、大豆と小豆は同じ豆類であるので、近親関係の従兄弟同士だと洒落たものだという。
いずれの説にしろ、かぼちゃはいつ出てくるのだ?と不思議だが、今年は冬至に食べられている「いとこ煮」を作ってみよう。ゆで小豆の缶詰を使う手抜きヴァージョンなら簡単に出来上がるのが嬉しい。
<冬至のいとこ煮>
・かぼちゃ:中サイズ1/2個
・ゆで小豆(缶詰・加糖のもの):200gほど
・砂糖、醤油、塩
(1)わたとタネを除き、一口大に切ったかぼちゃを鍋に入れ、水(カップ1ほど)、砂糖大さじ1、塩ひとつまみを加えて強火でひと煮立ちさせる。
(2)落としぶたをして、柔らかくなるまで弱火~中火で煮る。
(3)(2)にゆで小豆を加え、醤油少々を入れたらささっと混ぜ(潰さないように)、弱火で2~3分煮たら出来上がり。
歳時記×食文化研究所
北野 智子
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