日本人がかつお好きの理由
かつおは、日本の沿岸を流れる黒潮に乗ってやってくるので、古くからよく食されてきました。初夏に暖流の黒潮に乗って北上し、初秋には、寒流の親潮に乗って南下します。そのため日本近海では、年に2度、1回の漁で大量に獲れるので、煮てそのまま食べるほか、保存がきくように、「干して」活用してきました。
干して食べる魚は、堅魚とよばれ、いつしか、かつお自体が堅魚とよばれ、「鰹」という漢字、魚偏に堅という漢字もできました。
かつおは、うま味を持つグルタミン酸やコク味を感じるヒスチジンというアミノ酸が多く含まれています。平安時代には、食べるだけでなく、煮汁も「煎汁」(いろり)といった調味料としている記録もあります。
当時の「干しかつお」、堅魚はそのまま食べることができるくらいのビーフジャーキーのような硬さでした。堅魚でも単に干すだけなら、水分は完全に抜けず、カチカチではありません。肉や魚を干すには高温で加熱しなければ、肉が腐ってしまいます。加熱による乾燥によってあのような独特の形状になるのです。
水分を完璧に抜くカビ
ところが、かつお節はいったん煮たかつおを燻煙(くんえん)することで、低温で乾燥できます。そうすると、極度に表面が乾燥することなく、内部に水分を残したまま均一に水分が抜けていきます。このように水分が抜けていった状態を、科学的に「ガラス化」といいます。水分が抜けて硬い飴のようになります。かつお節の内部も割ってみると飴状でカチカチ。さらに、これにカビを付けます。表面に菌糸が生育し、菌糸が内部の水分を吸い出し、さらに乾燥が進むわけです。
かつお節はこうした工程を経て、世界一硬い食品となっているのです。
金内誠(宮城大学教授)
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