藁には枯草菌がいる!
糸引き納豆の伝統的な製法は、藁苞(わらづと)に煮豆を包んで暖かい場所に放置することで出来上がります。
藁の周りには、枯草菌(こそうきん)が存在しています。枯草菌のグループの中に納豆菌もいます。この枯草菌の特性が熱に強いことです。
納豆菌を含む枯草菌は、死にそうになると耐熱性に優れた胞子(芽胞・がほう)というカプセルを作り、熱の刺激をやり過ごします。この胞子(芽胞)を殺すためには121℃で、20分以上加熱しなくてはなりません。お湯の沸騰温度が100℃ですので、いかに耐熱性に優れているかがわかります。仮に、納豆汁を沸騰させても、納豆菌の胞子は生き残ります。温度が下がり、生育できる温度になると、胞子から発芽し、増殖を始めます。納豆菌は非常に生命力にあふれた菌なのです。
このように納豆菌が強力なために、菌を扱って生業にしているお酒屋さんや味噌・醤油屋さん、麹屋さんなどは日ごろから納豆を食べないといわれています。
高熱でも死なないカプセルのような胞子(芽胞)を作る納豆菌は、熱に強いだけでなく、酸などに対しても強い耐性を示します。
強い酸にも負けない
人間は、口から摂取すると、まず胃の中で蓄えられます。胃の中は、pH2.2と非常に強い酸性の胃液で満たされています。多くの菌種やウイルスは、食品と共に強い胃液の中で死滅します。もちろんヨーグルトの乳酸菌も同じです。多くの乳酸菌は腸に届くまでに死滅します。
しかし、納豆菌のカプセルは強く、胃酸に負けることなく腸まで運ばれ、悪玉菌を減少させ、善玉菌の生育を助ける腸内細菌による健康効果(プロバイオティクス効果)があると報告されています。ちなみに乳酸菌は死滅しても腸内で善玉菌のエサになることでちゃんと役割を果たします。またヨーグルトは、お腹に乳酸菌をとどまらせるため、夜食べた方がいいともいわれています。
納豆菌は、抗生物質を生産する働きを持っていて、腸内で悪玉菌の生育を阻害する効果を発揮。つまり納豆はヨーグルトと同じくらい、いやそれ以上に腸内環境をよくするすぐれた食品といえます。
金内誠(宮城大学教授)