なんと、この『歴メシを愉しむ』のコラムは、今回で99回目を迎えることができた。
まずは毎回の私の拙文にお相手いただいている方々に感謝申し上げねば。「ありがとうございます!」
さて99という数字は、人間の年齢に置き換えると99歳となり、「賀の祝い」でいえば、「白寿」である。
長寿を祝う「賀の祝い」
「賀の祝い」(「賀寿」「寿賀」「算賀」とも)とは、「長寿の祝い」のことで、40歳の「初老」から始まるが、家族や友人らの祝いを受けたのは、一般的に61歳(満60歳)の「還暦」から。以降、70歳「古希」、77歳「喜寿」、80歳「傘寿」、88歳「米寿」、90歳「卒寿」、99歳「白寿」、100歳「上寿」まである。
なんとまあ、40歳で「初老」とはビックリであるが、織田信長も愛好したと伝わる室町時代の幸若舞(こうわかまい)に、「人間五十年」と謳われて、日本人は長い間 寿命を50年、と考えてきたのだから仕方あるまい。
99歳をなぜ「白寿」というのかは、百歳より一歳若いことから、「百」という字から「一」を取って「白」となるというわけだ。
縁起物の「海老」+「そば」=「海老天そば」
さて、この「長寿の祝い」にあやかって、本コラム99回目記念のお祝いをしようと思い、ご馳走は何にしようかと悩んだ末、「海老天そば」を食べることにした。「あら、意外と地味ね…」とおっしゃるなかれ。昔から、長寿の祝いの代表は「伊勢海老」である。伊勢海老がめでたいことの象徴は、鮮やかで美しい赤い体色。同時に、長いヒゲ(触角)と腰を曲げて進む姿を老人になぞらえて「海老」と書き、長寿を祝う縁起物として「賀の祝い」用に重んじられてきた。
この最も大きな伊勢海老から車海老、小さな桜海老に至るまで、いろいろな種類がある海老属は、長寿の縁起物として祝い膳には欠かせない存在だ。
一方の「そば」は、「細く長い」ことから、長寿・延命への願いが込められた縁起物とされている。
ゆえに、「海老」と「そば」のダブル長寿のよくばり縁起食で、「海老天そば」というわけである。
いくらお祝いといえども、大きな伊勢海老を天ぷらにして、ドカンとそばにのせるのはいかがなものか…と思い、海老の種類は、伊勢海老に次ぐ車海老とすることに。車海老は、茹でると美しい紅白の縞模様がはっきりと現れることから、最も好まれており、おせち料理や祝いの膳では、有頭のままで盛り込まれる。
実は私の「海老天そば」は、正確に言うと「海老天ざる」である。私は、天ぷらやフライの揚げ衣が、出汁や玉子とじ、ソースなどで湿った状態が好きではない。そのため、天ぷらに添えられてくる天つゆも使わない。海老天ざるの天ぷらは、塩だけをちょっと付けて食べるのがいい。
話が逸れたが、白寿的に祝う『歴メシを愉しむ』99回の祝い膳、冷えた純米酒で乾杯と共に、何尾もの車海老の天ぷらと大盛りそばを、ごっそり心ゆくまで味わいたい。
歳時記×食文化研究所
北野 智子
発酵手帳2021、大好評発売中!
365日その季節に合った発酵食品のレシピや、小泉先生のコラム、付録には発酵食品をいつ作ったらよいか一目でわかる「発酵カレンダー」、発酵食品を作った際の日時、温度、分量などを記録できて次に役立つ「発酵手仕事」、「味噌特集」など、発酵食品好きにはたまらない「発酵手帳2021」が3年目を迎え、さらにパワーアップして大好評発売中!ぜひお役立てください。Amazonで大好評発売中です!