【歴メシを愉しむ(94)】初猟カルガモの美味~続・猟師デビュー

カテゴリー:食情報 投稿日:2021.01.28

昨年12月、『猟師デビューは鴨となるかも』で、先輩猟師の友人から、鴨撃ちに誘われた話を書いたが、今回はその後日談。

な、なんと、そのタイトル通り、初猟でカルガモを獲ったのである。

 

鴨撃ちの技を習う

カルガモを獲ったなどと書くと、一部の方からは、なんて可哀想!と言われるかもしれない。けれど、意外に思われるかも知れないが、カルガモは渡り鳥ではなく、鴨類の中で唯一の留鳥(とめどり)で、一年中ずっと日本に留まっている。ゆえに米農家さんからは、水田を踏み荒らして種もみを埋没させ、稲を食べるカルガモは害鳥とされている。

その日、友人猟師が連れて行ってくれたのは、兵庫県の山あいの地。鴨たちが、堤防に囲まれた池にプカプカと浮いている。

その堤へ、猟師二人組で(私はへっぴり腰だが)、そ~っと、ホントにそお~っと、息をも殺しながら登って行き、一人が鴨を水面から飛び立たせ、もう一人がその瞬間を狙って仕留める、という段取りである。水面までかなりの距離があっても、堤の上から人の頭がヌッと出ただけで、鴨はバタバタバタ~ッと飛び立つ。まずは友人が青首と呼ばれる真鴨を、その後私は何と、カルガモを仕留めたのである。昨秋猟師デビューをし、射撃場の練習以外で初めて撃った弾という、まさに奇跡のようなビギナーズラックだった。

 

鴨好き日本人のことわざアレコレ

鴨をはじめ雁(がん)、白鳥、雉、山鳥など、日本人は古代から鳥をよく食べてきた。鴨の骨は縄文時代の貝塚などからも多く出土しており、奈良時代の日本最古の地誌である『播磨国風土記』には、鴨を「羹(あつもの/魚鳥の肉を入れた熱い汁もの)」として食べたことが記されている。

そんな歴史からか、鴨に関することわざもいろいろあって興味深い。まず、「いとこ同士は鴨の味」。これは、「鴨の味」が「きわめて良い」という意味から、その夫婦や男女間の「良さ」をいう。ほかにも、賭け事などでいつも負ける人を「カモ」、その「カモにする」人がお金を持っていたり、さらに別の「カモ」を連れて来たりすると、「鴨が葱をしょって来た」となる。昔から「鴨」と「葱」は相性が良く、鴨鍋や鴨そばにねぎは欠かせない。蕎麦屋の品書きの「鴨南蛮」の「南蛮」の意味は、「葱」のことをいう(他説あり)。また、「隣の貧乏鴨の味」は、他人の不幸を見て喜ぶ心情を表しており、底意地の悪さが出ていることわざである。「鴨の水掻き」は、水面に浮かんでいる鴨はのんびりして見えるが、水の中では必死で水を掻いていることから、楽そうに見えても、人それぞれに苦労があるということを指していて、いろいろ面白い。

 

山の命をありがたくいただく

友人は、鴨撃ちの技を教えるだけでなく、初猟の私に、「ぜひ青首とカルガモを食べ比べてみて!」と、なんと自分が仕留めた真鴨を持たせてくれた。先輩猟師の思いやり、涙ながらありがたく頂戴した。

さて、山の命に感謝をして余すことなく食べさせていただくのが猟師。帰宅後すぐに調理に取りかかった。友人から教わったことに加え、事前に勉強をしていた甲斐もあり、さばきはできたが、さすが野鳥の、子どものこぶしほどもあるコチコチの硬さの砂肝には驚いた。まずは生まれて初めてのカルガモの砂肝、心臓、肝、もも肉を、塩・黒胡椒だけで焼いていただく。皮のコリンコリンの食感とコク、締まった肉の旨みは、気絶しそうなほどに美味なるものであった。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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