【歴メシを愉しむ(92)】祝い箸のナゾ~「海山」って?

カテゴリー:食情報 投稿日:2021.01.03

先日、ショックなことがあった。クライアントと打合せをしている時、おせち料理の話題になり、祝い箸に話が及んだ時のこと…ふとその女性が真顔で、「北野さん、『海山(うみやま)』って知ってはります?」と訊かれるので、「ハイ、もちろん!使いますよ」と答えたら、「わぁ~、よかったぁ~!!」と大感激された。さてさて、何が「ショック」で、何が「よかった」のかというと…。

 

日本全国の家庭で正月に使っていると思っていた

私たちが話をしていたのは、おせちの重箱から、それぞれの料理を取る時に使う祝い箸のことで、家族銘々の名前を書くのと同様に、祝い箸の袋には「海山」と書く。

その方は、兵庫県南部(都市部)にうまれ育ち、勤務地は大阪市北区梅田で、昨年までの数年を転勤先の福岡市博多で過ごされたという。この3エリア全てで、生まれてから現在まで30年以上も、「海山」を知っていた人に出会ったことがなかったとのことで、知っていただけでなく、使っている人間にやっと巡り会うことができたことに感激されたのだった。

同席されていた上司に、「よかったねえ、やっと知っている人に出会えて!」とからかわれているのを見て、今度は私がびっくりし、「えっ~?!私は今の今まで、お正月には日本中、全家庭で使っていると思ってました!」と言うと、即座にお二人は首を横に振ったのを見て、かなりのショックを受けたのだった。

その方の話がまた面白い。「これまで数えきれないほどの人に、『海山』の話をしたら、皆が皆に、『それって何?』と質問され、説明すると、『聞いたこともない!』に始まり、『何かの宗教だから?』とか、『出身地だけの風習?』とか言われてきた」そうな。

言われてみれば、私にとってはおせちの祝い箸「海山」は当然のこと過ぎて、それを知っているかどうかを他⼈に訊いたことすらない。

 

「海山」は感謝の心をこめた祝い箸

元々、お正月のおせち料理は、まずは歳神さまに供えて、その後に家族がいただくもの。日頃の感謝の気持ちを神さまに捧げるのが目的なので、料理は隙間なく重箱に詰めるのがしきたりだとされている。数の子、黒豆、ごまめ(関西ではたたきごぼう)の祝い肴三種や煮しめ、海老、昆布巻、きんとんなど、煮物、焼き物、和え物などにした「海の幸」「山の幸」が縁起にちなんでバランスよく使われている。

これら「海の幸」「山の幸」への感謝の気持ちと縁起を担いで、箸袋に「海山」と書き、おせち料理に添える取り箸とする。

 

祝い箸は縁起の良い柳の木

正月に祝い箸として用いられるのは柳の箸。柳は、秋は最後まで葉を付け、春は他に先駆けて芽吹き始める「芽出たい」木で、邪気を祓う縁起の良い木。またしなやかで折れにくいことから、長寿を願う気持ちもこめられている。両端が細くなっているのは、一方は神さま、もう一方を人が使う、「神人共食」を意味している。

「海山」をご存知なかった方も、お正月には、ご用意されてはいかがでしょう。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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