【歴メシを愉しむ(33)】
鏡開き~「発酵からみ餅」で止められない幸せ

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.01.11

1月11日は「鏡開き」。お正月に床の間や神棚、仏壇、リビングなどに飾っていた鏡餅を下げて、雑煮やお汁粉、ぜんざいなどにして祝う行事である。

現在では鏡餅を飾る家は減ったし、飾ったとしても、普通の小餅とほとんど変わらないサイズの餅が二段になった真空パックタイプのものが主流だろうから、鏡開きの経験の無い人も多いのではなかろうか。

 

鏡開きの由来

私の実家は商売をしていたこともあって、大晦日の夜になると、掃き清めた店の中央と床の間に「お鏡さん」と呼んで、大きな鏡餅を飾っていた。その鏡餅は、近所の和菓子屋さんが搗いたもので、職人さんが大きな木箱に入れて、うんせうんせと配達をしてくれていた。

鏡開きの日に鏡餅を開くのは母と私が担当だったが、実家の鏡餅はとても大きく、10日以上も飾られていたので表面にはひびが入りカチコチで、悪戦苦闘をしたものだ。初めの一撃は父が行い、まずは4~5つの塊にする。そこから母と私が小さく開いていくのだが、これが硬いのなんの。

ところで先程から鏡餅を、「開く」といっているが、昔から「切る」という言葉を忌んで、「開く」といい、刃物を使わずに、手や木槌で割ってきた。そうはいうものの実際には至難の技で、実家でも小さな包丁を使っていたが、全てを終えた頃には手のひらがじんじんと痛かったのを覚えている。

古来、米には稲の霊力である稲魂(いなだま)が宿ると信じられてきたことから、米を凝縮してつくる餅や酒を神さまに供え、その後に人々が食べることによって稲の霊力がその身に宿ると考えられていた。正月の鏡餅はその象徴ともいえるもので、歳神さまの依りつく対象物=依代(よりしろ)とされていた。鏡餅の丸く平らな形は、三種の神器の一つで、古代から神聖な祭祀用具として用いられてきた鏡の形を模しているといわれている。また「鏡」は「円満」を、「開く」は「末広がり」を意味するとされ、鏡開きの行事は一家の円満と繁栄を願う心も込められているそうだ。

ちなみに、かつて「お年玉」はお金ではなく、正月の丸い小餅だった。歳神さまの御霊(みたま)を分けていただくことから、「歳霊(としだま)」=「年玉」で、子どもだけでなく大人もすべてもらっていた。

 

発酵食品と和えたトロリ美味なからみ餅

私は幼い頃から毎年、元日の雑煮を除いて、正月三が日の間は思ったよりも餅を食べない。おせちや睨み鯛、きずし、棒鱈、鍋ものなどご馳走だらけで、とても餅にまで手が伸びなかったのだ。そんな理由で、正月から1週間以上が過ぎた鏡開きの日は楽しみであった。それは、餅をお汁粉やぜんざいにして食べることではない。子どもの頃は甘いものが苦手だったので、香ばしい焼き餅にして、うにくらげやたらこをたっぷり塗った“酒のアテ風餅”や、白い部分が見えないほど海苔を巻いた“真っ黒磯辺巻”などで食べるのが大好きだった。お腹が一杯になっているのに、まだ口が欲しがるからと、際限なく食べるので、よく母に止められたものだ。

ここ数年は、大好きな和と洋の発酵食品と柔らかい餅をからめた「発酵からみ餅」にして楽しんでいる。まず餅は、水を張った耐熱容器に入れてレンジでチン、または鍋で沸騰させた湯に入れて柔らかくしたものを使用。いくつかのバリエーションをご紹介すると―

「納豆&鰹節からみ餅(納豆、鰹節、醤油を混ぜて餅とからめる)」「鰹節&大根おろしからみ餅(餅に鰹節、大根おろしをのせ醤油をかける)」「醤油&マヨネーズ&七味からみ餅(醤油とマヨを好みの割合で混ぜて七味をパラリ)」「酒粕&バターからみ餅(柔らかくした酒粕とバターを1:1で混ぜ餅とからめる)」「パルミジャーノチーズ&E.V.オリーブオイルからみ餅(薄く削ったチーズ、オイルを餅とからめる)」などなど。

甘味のものとしては、「甘酒&生姜からみ餅(温めた濃厚系甘酒とおろし生姜を餅にからめる)」がおすすめだ…と、書いていると、たまらなく「発酵からみ餅」の口になってきたので、早速作ることにしよう!

歳時記×食文化研究所

北野智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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