お肉は日本人の体に合わない!?
日本人は、五〇〜六〇年前までは今のように何不自由なく牛乳を飲めませんでした。私が子どもの頃は、日本にホルスタインなどの乳牛がいなかったので、牛乳を飲んだことがありません。そのため、日本人には体内に牛乳を分解する酵素が必要なかったのです。分解酵素がない人が牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロと鳴ったり、うんちがゆるみます。これを乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)といいますが、日本人はみんな、乳糖不耐症の体になっているのです。
同じように、日本人は何百年も日常的に肉を食べたことがありませんでした。だから、 日本人の体には肉に対する適応性がないのです。そんな遺伝子を持つ日本人が急激に肉を食べると、アシドーシスという症状を起こして血液が酸性になり、さまざまな病気を引き起こすといわれています。糖尿病になったり、コレステロール値が高くなったり、高脂血症になったりします。悪くすると、直腸がんになってしまうのです。
これは、日本人が民族として共通に持つ遺伝子がなせる業(わざ)ですから、個人の問題ではありません。遺伝子は五〇年や六〇年では変わりませんから、食べるものを急激に変えないほうがいいのです。日本人の遺伝子は、長い歴史のなかでつくられてきました。そこに肉や脂がドーンと入ってきたので遺伝子が対応できない状況になってしまったのです。要は肉を食べるな、というのではなく、肉を食べてもよいが、野菜なども多く摂って、バランスよく食べる必要があるということです。日本の「すき焼き」などは、肉の量に対して具が圧倒的に多く、これは理想的な食べ方といえます。
元気がでる食事とは
また、多くの日本人は、栄養のあるものを食べさえすればいいのだ、と思っている人がとても多い。特に大きな災害があると、とりあえず栄養価の高いものを食べて元気を出そうとしますが、それは間違った考えです。日本人は、日本古来の食べものを食べたほうが元気を出すことができます。
小泉武夫