映画「翔んで埼玉」の大ヒットで今、日本全国から注目が集まっている埼玉県。その中央に位置する鴻巣市で、昔ながらの食文化を守るてらやま農園に編集部が密着してから半年が経ちました。
3月は、地域の神社で明治頃から続くと言われる「初午(はつうま)祭り」があり、特別な「すみつかり」(「すみつかれ」ともいう)という料理を食べると伺い、取材してきました。
祭を案内してくれた寺山將之さん
初午とは神社の厄除け・開運のお祭りで、埼玉県鴻巣市の正一位本倉稲荷大明神では毎年白狐を販売し、地域の住民が昨年の白狐と交換しに訪れていました。
ズラリとならぶ白狐が圧巻
また、お祭りでは1個20円でくじ引きもあり、生活用品が当たるということで、近所の子どもたちに大好評でした。このくじ引きは終戦後、物資不足で苦労していた住民のために始まった習わしで、今でも生活用品を中心に景品を用意しているのだそうです。
竹ぼうきが当たりました!
初午で神社にお供えするのは「海のもの、山のもの、里のもの」を揃えると決まっているそうです。今年も、お頭付きの鯛、上が赤く染められた供え餅、野菜、果物、油揚げ、油などが供えられていました。
地域の伝統が守られている
そんなお祭りの最中、てらやま農園の台所では「すみつかり」作りが着々と進められていました。すみつかりは大根をすりおろして、節分で巻いた大豆と一緒に煮込む郷土料理です。
胃腸に優しく、有効的に水分摂取ができる大根の煮込みを、畑の肉と呼ばれるほど栄養豊富な大豆とともに食べるすみつかり。アスリートレシピの観点から見ても、季節の変わり目で体調が安定しないこの時期に水分とたんぱく質を有効に摂取でき、強い体づくりにふさわしいメニューと言えます。やはり、昔ながらの食事は、最も日本人の健康に合っているのでしょう。
すみつかりの作り方
【材料】
※てらやま農園は大鍋いっぱいに作っているので、今回の量は目安です。
ご自宅で作る際は、味をみながら分量を調整してください。
・大根:1本
・油揚げ:1枚
・出汁昆布:1枚
・節分の大豆の残り:1カップ
・しょう油:大さじ2
・酒:大さじ2
・みりん:大さじ1
【作り方】
1./「鬼おろし」という、すみつかり専用の器具で大根をすりおろします。
専用器具は隣人からいただいた
2./鍋に、すりおろした大根、細切りにした油揚げ、細かく切った出汁昆布、節分の豆を入れて、じっくり煮込みます。
たっぷり作るのが寺山農園流
3./大豆が柔らかく煮えたら、醤油、酒、みりんで味を整えます。
酒粕を入れる地域もあるそう
4./ひと煮立ちしたら完成です。
味噌汁代わりにいただく
200kmもの長距離を走りぬく「ウルトラマラソン」の走者である寺山卓さんも、一口食べて「うん、この味だ!」と嬉しそうに笑うすみつかり。冬の寒さを越して甘味が増した大根をふんだんに使った、優しいお味のアスリート食です。