沖縄県は、長寿県のイメージがあるので、今でも長寿県を尋ねる街頭アンケートを行う と、沖縄県はトップになるだろうと思います。しかし、今では長寿県ではありません。なぜそうなったかというと、お年寄りが早く亡くなるからではなく、働き盛りの年代が短命になったからです。そのために、平均寿命がダーッと下がってきました。死因のなかで多いのは消化器系の病気です。食道がん、舌がん、肝臓がん、胃がんなどがありますが、なかでもいちばん死因に直結しているのは潰瘍性大腸炎というものだそうです。
沖縄の男性を蝕(むしば)む潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎というのは、平ったくいえばお腹の中の腸管の内部におできができる病気 です。皮膚にできたおできであれば、抗生物質を塗れば治ります。しかし、腸内にできたおできは、ふつう気がつきません。手当てをしないから六日か七日経つと化膿して膨らみ、 痛くなってきます。このときに気づいて抗生物質を飲めば治るのですが、断続的な痛みなので、一過性の腹痛だと思って放置してしまうのです。
やがて、体内に白血球がたまって、熱が出ます。おできが大きくなるとほんの少し便に血が混ざります。しかし、最近のトイレは水洗ですから、血便に気づかず流してしまうのです。そうこうしていると、大きく腫れたおできがお腹の中で激痛を生むようになります。このとき痛みをこらえようと屈み込むと、腹筋でおできがつぶれて膿や血液がどっと流れ出るのです。この症状は急性腹膜炎の一種で、こうなると一時間以内に緊急手術しなければ命にかかわります。
このような病気は、かつての日本にはなかったものです。いったい何が起こっているのだろうと調べてみると、驚くべきことがわかりました。沖縄の多くの家庭は、食卓がアメリカ化しているのです。
小泉武夫