11月20日。てらやま農園では、「えびす講」と呼ばれる行事が行われていました。えびす講とはこの1年の感謝と来年の豊作を願い、えびす様に新米、けんちん汁、生のさんま、お酒をお供えする行事です。地域によって内容は多少異なるようですが、てらやま農園ではこの土地に古くから伝わるやり方を守っているそうです。
編集部が驚いたのは、ここでお供えされていたけんちん汁です。けんちん汁と言えば豆腐がメインで、醤油味というのが一般的ですが、てらやま農園のけんちん汁は味噌が入っていて一味違っていたのです。
Q:けんちん汁に味噌を入れるのですね。
寺山里美さん(以下、寺山):これは、“埼玉県の郷土料理のけんちん汁”なんです。県内でも地域によって味つけは変わりますが、県北のこの辺りでは味噌で仕立てるのが一般的です。埼玉県では古くからえびす講でお供えする代表的な料理と位置づけられています。
Q:埼玉県では味噌入りけんちん汁が一般的なんですね!
寺山:近年ではこの地域でもえびす講を行う農家は減ってきました。ですから、この地域特有のけんちん汁を知る人も減ってきているようです。私たちてらやま農園は、えびす講もけんちん汁も、昔から続いてきた伝統文化をなるべくそのまま残したいと考えています。
それに、この時期にけんちん汁を食べるのは、アスリートレシピの観点からもピッタリなんですよ。昔から伝わる食文化は、人間の体に合うようにできているものだと感心します。
Q:けんちん汁は、アスリート飯としてどんな効果があるのですか?
寺山:寒くなってくると、どうしても筋肉が縮こまります。その縮こまった筋肉を温めてしっかりほぐさないと、捻挫や肉離れなど怪我の原因となるのです。それに、この時期になるとインフルエンザなどの感染症も流行ります。病気で体調を崩すとベストなパフォーマンスを発揮できなくなってしまうので、何とか避けたいものです。
怪我も病気もせずに寒い冬を乗り切るには、体の中から温めるように意識して食事を摂る必要があります。それには、野菜たっぷりの温かい汁物がおすすめです。味噌は腸内環境を整えて免疫力を高めるうえ、けんちん汁なら野菜も摂取できます。地域に古くから伝わる味噌(てらやま農園は自家製味噌を使っている)入りけんちん汁で、体の芯から温まる冬に最適のアスリート飯と言えます。
「味噌入りけんちん汁」の作り方
【材料】(4人分)
・だいこん:1/2本
・にんじん:1本
・玉ねぎ:1個
・さといも:3個
・ごぼう:1/2本
・油揚げ:1枚
・こんにゃく:1枚
・ごま油:大さじ2
・味噌:大さじ3
・醤油:大さじ1
(野菜はお宅の冷蔵庫にある物でアレンジしてOKです)
【作り方】
1./野菜をすべて、ひとくち大に切ります。
2./油揚げは熱湯で油抜きをして、1cm幅に切ります。
こんにゃくもさっと茹でてあく抜きをして、食べやすい大きさにちぎります。
3/鍋にごま油を熱し、1の野菜を炒めます。全体に油が回ったら、2を加えてさらに炒めます。2に油が回ったら、ヒタヒタになる程度の水を加えて煮込みます。
野菜をたっぷり摂取できます
4./3に味噌、醤油を加えて味を整えて、ひと煮立ちしたらできあがりです。
ごま油の香りが食欲をそそる