優秀な発酵食品、キムチの素顔
韓国のキムチは、旬の野菜に唐辛子、海産物の塩辛、ショウガ、ニンニクなどの薬味を加えてつくる発酵食品。季節の野菜でつくる即席キムチと、秋から冬に仕込んで長期保存するキムジャンキムチなどがあり、おなじみの白菜キムチはキムジャンキムチのひとつです。「キムジャン」というのは、秋から冬に大量のキムチを仕込む行事のこと。ひと家族で20個や50個など、たくさんの白菜をまとめて仕込むことが多く、かつては甕に仕込んで土に埋めて保存したそうですが、現在は、キムチ冷蔵庫で保存するのが一般的です。
韓国に唐辛子が伝わったのは16世紀頃のこと。現在のように赤唐辛子を使うキムチがつくられるようになったのは、18世紀以降といわれています。キムチには、唐辛子を使ったもののほかに、酢や醤油を使ったもの、水キムチなど、種類はいろいろ。地域によって作り方や味もさまざまで、家庭の数だけレシピがあるといわれています。
キムチだれ「薬念」って?
キムチを仕込むためのキムチだれ「薬念」は、ヤンニョムやヤンニョンと呼ばれます。「薬念」は、いろいろな調味料や薬味を合わせたものの総称で、「食は薬である」という考え方がもとになっています。
ここで紹介するレシピは、麹を使った発酵最強バージョン。塩麹と麹甘酒で仕込むことで、麹の複雑な旨みが加わり、さらに発酵力もアップ。好みで塩麹のかわりに塩、麹甘酒のかわりに砂糖を使ってもよいでしょう。
韓国では、キムチづくりには果物のナシが欠かせませんが、日本では冬に入手しづらいため、リンゴを使ったレシピで紹介しています。ナシが手に入るときはナシを使ってみましょう。
キムチだれ「薬念」があれば、野菜と和えるだけで、簡単に本格キムチをつくれます。自家製なら、辛さの調節も簡単です。好みの味に仕上げましょう。
【材料】(白菜1個ぶんを作れる量)
A(出汁)
・水:400ml(2カップ)
・昆布:5cm角2枚
・煮干し:15g
・かつおぶし:5g
B(野菜・果物・調味料)
・しょうが(すりおろし):大さじ2
・にんにく(すりおろし):大さじ1
・玉ネギ(すりおろし):大さじ1
・大根(千切り):200g
・ニンジン(千切り):100g(小1本)
・ニラ(ザク切り):1束
・セリ(ザク切り):1束
・リンゴまたはナシ(すりおろし):1個分
・イカの塩辛:50g
・アミの塩辛:50g(または干しエビ:大さじ2)
・塩麹:大さじ1~2(塩分量によって調節)
・麹甘酒:大さじ2
・ナンプラー(またはカナリエキス):大さじ1
・白ゴマ:大さじ1
・韓国唐辛子:50g(細びき25g+粗びき25g)
Aの出汁の材料
Bの野菜、果物、調味料
【作り方】
1./煮干しは頭と腹ワタを取り除く。
胸のあたりの黒い部分が腹ワタ
2./鍋にAの出汁の材料を合わせて中火にかけ、ひと煮立ちさせて火をとめ、そのまま冷めるまでおいておく。
軽く沸騰させて火をとめる
3./2の出汁をザルで濾す。
冷めてからザルで濾しておく
4./大根とニンジンは千切り、ニラとセリは3cm長さのザク切り、リンゴ、玉ネギ、ショウガ、にんにくはすりおろす。
野菜は刻み、薬味とリンゴはすりおろす
5./大きいボウルや鍋などに、すべての材料を合わせる。イカの塩辛のひと切れが大きい場合は、ひと口大に切っておく。
ボウルに材料を合わせる
6./最後に3の出汁を加える。
出汁を加えて混ぜる
7./全体をまんべんなく混ぜる。素手でやると危険なので、かならず調理用手袋をつけて作業すること。
手袋をつけて、全体をよく混ぜる
8./最後に味を見て、好みで塩麹、麹甘酒、韓国唐辛子で味をととのえれば、キムチだれ「薬念」のできあがり。下漬けした野菜と合わせて本漬けするほか、生の野菜と和えてもおいしい。保存は、ジッパー付き保存袋などに入れて冷蔵庫へ。保存期間は1~3か月ほど。時間が経過するにつれて発酵がすすみ、酸味がたってくる。
冷蔵庫で保存する
●本格白菜キムチ(キムチだれ「薬念」を使ったレシピ)
漬けたての浅漬けを味わうもよし、発酵がすすんで酸味がたつ過程を味わうもよし。そのまま食べるほか、豚肉と炒めたり、刻んでスープにしたり、キムチチゲなどに。自家製の白菜キムチのおいしさをとことん味わってください!
【材料】(作りやすい量)
・白菜:1/4株
・塩:白菜の重さの3~4%
・キムチだれ(薬念):上記の分量の約1/4
【作り方】
1./白菜は、ザルなどに置いて半日ほど干す。干すと甘みが増すが、干さなくてもよい。
2./白菜の重さをはかり、分量の塩をまぶし、白菜の2~3倍の重石を乗せてひと晩漬ける。ビニール袋や簡易漬けもの容器を使うと便利。
3./下漬けした白菜の味を見て、塩気が強いときはさっと水で洗い、ザルなどに置いて水気をしっかり切る。
4./キムチだれを葉の間に塗っていき、全体に塗ったら丸め、最後に外葉でくるりとつつみ、保存容器やジッパーつきビニール袋などに入れて、漬け込み完了。すぐに食べられるが、1~2週間後くらいからが美味。日をおくと酸味がたつ。冷蔵保存し、3か月ほどで食べ切る。
撮影:信長江美
文・レシピ:オザワエイコ
手作り調味料研究家。編集者。自家製調味料の仕込み教室「かもしラボ」主宰。著書に『だからつくる調味料』(ブロンズ新社)がある。