先週行われた「仙台ラーメンフェスタ2016」では、“食べ残し”を無駄にしないための、全国的にも珍しい1つの取り組みが行われたという。鍵となったのは“発酵”のチカラだ!
微生物の働きをさまざまに活用するのが“発酵”。人々は昔からさまざまなところで発酵を活用してきたが、最近ではゴミ処理にも活用されている。宮城県亘理町のバイオマス発電事業に参画するサステイナブルエネルギー開発(東京)は、11月18〜23日に太白区あすと長町で行われた「仙台ラーメンフェスタ2016」で出た食べ残しを回収し、発酵させメタンガスを製造、発電に活用する。
同社が「仙台ラーメンフェスタ2016」に設置したエコステーションで回収したラーメンの食べ残しは、約10t。現在、亘理町のバイオマス発電施設に運ばれ、メタンガス化・発電の工程に回されている。
回収された食べ残し
1.可溶化コンテナで材料を溶かす
食べ残しは、まず粉砕され、可溶化菌を混合。菌の働きで炭水化物、脂質、たんぱく質が分解される。これにより食べ残しの栄養分が低分子化され、メタン菌が利用しやすくなる。
2.発酵用コンテナでメタンガス生成
3つの発酵槽で、メタン菌の働きによりガスを生成する。有機物を生成する「酸生成」、酢酸と水素を生成する「酢酸生成」、メタンと二酸化炭素を生成する「メタン生成」のプロセスを経て、メタンガスになる。
3.発電用コンテナ
発電用コンテナには、ガスホルダーと発電機があり、2で作られたメタンガスを使って発電が行われる。
正面がコンテナ式バイオマス発電装置
左の緑のコンテナは植物工場
今回、「仙台ラーメンフェスタ2016」で回収された食べ残しからは、推計でバイオガス発生量約3400立法メートル、メタンガス量約2200立法メートル、発電量約7,500kw(コンテナ式発電装置を12日間稼働させるエネルギー)が作られる予定。電気・排熱は亘理町のバイオマス発電施設に併設されている同社の野菜工場で使用される。また、発酵の残りカスは、液体肥料として活用される。
食品は本来食べるために作られたもの。しかし、現在日本では、食べ残し(食品残渣)や食べられるのに廃棄される食品ロスなどの食品廃棄物が食料消費全体の3割にあたる年間2797万t(農林水産省及び環境省「平成25年度推計」)にもなるとされ、社会問題となっている。食品廃棄物をエネルギーとして再利用するこの技術は、エネルギー源としてだけでなく、廃棄物の焼却、埋立てにかかるコストも減らすことができる。
「弊社のバイオマスコンテナ施設は、少ない原料にも対応できるもの。今回の取り組みを通じて、食べ残しやエネルギーの問題を考える機会となればよいですね」(同社代表取締役社長・光山昌浩さん)