東京から東に約60km、千葉県の北端中央部にある小さな町が、今“発酵の里”として大注目を集めています。
その象徴ともいえるのが、「発酵の里こうざき酒蔵まつり」。期間中には、沿道に地域物産や発酵食品の露店が約200店も並び、約5万人が来場する(2016年は3月13日開催/年1回)、ホットなイベント。実はこれ、神崎町の2つの酒蔵がそれぞれ別に行っていた蔵まつりからスタートしたものなのです。
神崎町民のシンボル神崎神社
右手は、なんじゃもんじゃの木(樟)
神崎町は、利根川の恵みで発展した町です。肥沃な沖積地で米や麦、大豆が生産され、北総の穀倉地帯でした。これらの生産物と豊かな水資源を活用して、江戸時代には酒や醤油、味噌作りが盛んになりました。利根川を水運として江戸へ多くの品が送られ、西の酒どころ「灘」になぞらえ、「関東灘」とも呼ばれるほどでした。
水の恵み豊かな神崎町
近年の発酵ブームの背景には、全国各地で地道なものづくりを続けてきた醸造家の存在があることは言うまでもありません。神崎町にも、この地の発酵文化を守り続けたいくつかの蔵がありました。なかでも、「寺田本家」「鍋店神崎酒造蔵」は、全国的にも知られる酒蔵です。それぞれ行っていた人気の蔵まつりを「発酵の里こうざき酒蔵まつり」として神崎町の発酵文化を発信するイベントとして行い、大成功を収めたのです。
神崎町には、ほかに醤油蔵や麹屋、それらの品を使ったパン屋や惣菜店などがあります。そして、2015年4月には神崎町の発酵文化の新たな発信基地ともいえる道の駅「発酵の里こうざき」がオープンしました。今や全国から人が訪れる人気スポットとなっているのです。
【寺田本家】
「五人娘」「香取」などで知られる延宝年間(1673〜1681年)創業の醸造元。無農薬自然米に蔵内の井戸水を仕込み水とし、伝統的な生酛仕込み。手作業で微生物本来の力を生かす、今や全国的にも珍しい酒造りを行っている。神崎神社の鎮守の森の水脈から湧き出るという井戸水は、中硬水ですっきりとおいしい。米の乳酸発酵飲料「マイグルト」なども人気が高い。
住所:千葉県香取郡神崎町神崎本宿1964
電話:0478-72-2221
HP:http://www.teradahonke.co.jp/
寺田本家。中央はかつて使っていた煙突
蒸米作りに使う甑(こしき)と釜
麹室。蔵付きの麹菌を使う
【鍋店(なべだな)神崎酒造蔵】
元禄2年(1689年)創業、「仁勇」「不動」で知られる酒蔵。「とにかくおいしいお酒をいかに作るか」にこだわり、原料は全て国産米、伝統の手造りの技法を守りつつ、最新の設備を導入して酒造りを行っている。品質を守るため、杜氏を含め自社スタッフで全工程を行っているのも珍しい。生産量は千葉県でもトップクラス。蔵見学も受け付けている(要予約)。
鍋店神崎酒造蔵
築約100年の蔵に最新の設備
精米から瓶詰めまで、すべて社員で行っている
住所:千葉県香取郡神崎町神崎本宿1916
電話:0476-22-1455
【発酵の里こうざき】
わざわざ訪れる人も多い人気の道の駅
神崎町の発酵文化を1ヵ所で楽しみたいのならココ。発酵をテーマとしたコンセプト型の道の駅。神崎町だけでなく、全国の選りすぐりの発酵食品を購入できる。地元の農産物を購入できる新鮮市場や、発酵食品を使った料理やスイーツを楽しめるカフェ&レストランオリゼも人気。
住所:千葉県香取郡神崎町松崎855
TEL:0478-70-1711
HP:http://www.hakkounosato.com/