古くから日本各地で作られてきた「かてめし」をもとに、料理研究家の奥田ここさんが「かてずし」を考案しました。ムシムシするこれからの時季に、酢の酸味で食が進む、具沢山の一品はいかがでしょうか。
「かてめし」は庶民の知恵からか
「かてめし」とは、貴重だった米に小豆や粟などの雑穀や大根や芋といった野菜を加え、できるだけかさ増しして食べようとする庶民の工夫から生まれた料理の総称です。地域によって使われる食材は様々ですが、「大根めし」「小豆めし」が広く知られているでしょうか。
さまざまな食材が生きる「かてめし」
素朴な料理の「かてめし」に、和食やイタリア料理の料理教室を主宰する料理研究家の奥田さんが注目したのは、「飯(めし)と雑穀を軸として、さまざまな食材を美味しくしてくれる懐深さ」からでした。「かてめし」に入れられたのは使える食材なんでも、決まりはありません。築地市場を“師”と仰ぎ、国内外の市場や生産地に赴いて食材との出会いを探す奥田さんにとって、いろいろな食材を合わせられることが魅力だったのです。
アスパラガスと鮭、金時芋のかてめし
奥田さんの作る「かてめし」は、多種多彩。そして、調理の際にちょこちょこ余った食材から残ったおかずまで、「かてめし」として使い切ることも多いといいます。「かてめしは、茶道の懐石料理における命をすべていただく(食材を使いきる)という考え方にも通じていると思います」(奥田さん)
ひよこ豆とほうれん草のかてめし
「かてめし」を「すし」にして、ハレの日のお料理に!
トップ写真は、豚肉・里芋・蓮根・かんぴょうなど北関東特産の食材を使った「かてずし」です。かてめしはどちらかといえばケ(日常)の料理。奥田さんは、これをすしにすることでハレの料理に変身させました。酸味を加えることで味に深みが出て、ワンランク上の味わいに!
「北関東食材のかてずし」は、細切りにした豚肉は生姜・醤油・酒で下味をつけ、油を使わず炒(い)るように炒めることで、余分な脂を落とします。かんぴょうは素揚げ、里芋と蓮根は蒸し煮にした後ごはんにも混ぜる合わせ酢の一部を使って調味します。すしめしは、米とそば米(そばの実を茹でて乾燥させ、皮を取り除いたもの)に梅を入れて炊きました。
「豚肉がコクを生んで、今回のかてずしの味に一役買っています。仕上げに季節の香味柑橘のスダチを搾るのがお薦めです」(奥田さん)
素揚げしたかんぴょうはすし飯と好相性
地元の食材で「かてずし」を作ろう!
かてずしは、「少しのごはんで、こんなにボリュームが出る!」「一皿でいろいろな食材が取れて嬉しい」と好評だといいます。いろいろな食材が合わせられるのが、かてずしのよいところ。地元の旬の食材を使い、かてずしを作ってみてはいかがでしょうか。
「かてずしをおいしく作るコツは、 1.調理された具材、もしくは下味をつけた具材を使うこと 2.具材の余分な水分を切ってからごはんと混ぜること。さらに胡麻や大葉、生姜など、香味食材を添えると、グンとおいしく頂けます」(奥田さん)
かてずしで、自然の恵みをたっぷり頂きましょう!
余分な水分を切って混ぜるのがコツ
写真提供・取材協力/奥田ここ(http://www.chisou.typepad.jp/)