農林水産省が納豆の国際規格化を提案しました。9月に開催される「コーデックス委員会(食品の国際機関)」のアジア部会の議題に「Natto」が記載され、“世界標準”づくりへ向けて動き出しました。こうした背景には、2013年に和食が世界遺産に登録され認知度が上がったことや世界的な健康志向のなかで納豆人気が過熱していることがあります。特に中国や韓国では“類似食品”が出回り、関係者の間では懸念が広がっていました。
発酵学者であり納豆関連の著書も多い小泉武夫(当サイト総合監修/東京農業大学名誉教授)は、納豆の国際規格化についてこう述べています。
「納豆の国際規格を作ることはいいことだと思います。ただし、食の国際化はなかなか難しいものです。一般的には納豆は“蒸し大豆を納豆菌で発酵させたもので無塩。攪拌(かくはん)によって白濁し、特異の粘性物質が確認できるもの”とされていますが、納豆を語るにはまだ不十分です。また、納豆は日本だけの食べものではありません。ミャンマーや中国雲南省からベトナムをはじめとする東南アジアにかけた地域にも見られます。東南アジアではテンペという大豆などをテンペ菌で発酵させる発酵食品もあります。それぞれの土地に納豆文化は存在しているのです。
私の考えは、こうした納豆文化を持つ国々と協調し、同調しながら定義づけを行うことが大切ではないかと思っています。
実は日本はキムチでは逆のことをしています。キムチも同じく(キムジャン文化が世界遺産に登録された)韓国の伝統的な漬物です。しかし、日本で出回っているキムチの大半は発酵させていない一夜漬けキムチです。キムチ風と呼ぶものです。もちろん、韓国の人たちは当惑しています。いずれにしても食に壁をつくるのではなく、納豆の国際規格によって理解が深まり食品への安全が担保されればいいのではないでしょうか。それが日本の納豆にもプラスになると思っています」