【世界の発酵食通信】黄色い油「サル・マイ」

カテゴリー:発酵食品全般 投稿日:2016.05.20

中央アジアの遊牧民族の家庭の食卓に必ずと言っていいほどあり、とても大切にされている黄色い柔らかい油の塊がある。これを「サル・マイ」という。現地語で「サル」は黄色、「マイ」は油の意味。つまり、「黄色い油」という意味だ。

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シルクロードの草原

 

原材料は牛乳。生乳を加熱し遠心分離機で取り出した乳脂肪分のカイマク(生クリームのようなもの)をさらに強く撹拌(チャーニング)して作る。

【世界の発酵食通信】究極のミルクティー

【世界の発酵食通信】生クリームの原型「カイマク」

 

夏の間のミルクが豊富に絞れる時期に生産され、出来上がったものは塩漬けしたヤギや羊の胃袋に入れるのが伝統的な保存方法。

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このようにバザールで売られている

 

いわゆるバターに似ているが、サル・マイはもっと油分が多く、すこしザラッとした舌触りがあり、牛乳由来の独特の香りがある。透き通るような油分が口の中で溶けていき、少しだけ体が熱くなるような感じがする。

これは、牛乳から精製されたものの中では最上級のもので、まさに乳製品の醍醐味である。

仏教の大乗経典『大般涅槃経』(だいはつねはんきょう)の中に、このような記述がある。

「牛より乳を出し、乳より酪(らく)を出し、酪より生酥(せいそ)を出し、生酥より熟酥(じゅくそ)を出し、熟酥より醍醐を出す」

醍醐とは、乳製品の加工過程の最終段階のことを言い、また、「醍醐味」の語源となっている。「これ以上ない最上級」とか「真髄」という意味だ。

この「サル・マイ」は醍醐のことではなかろうか。

そんな風に思えて仕方ない。

取材/文:市川亜矢子

 

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