今、注目のスーパー野菜
春一番が吹いたとはいえ、まだ冬の気配の残るこの時季にありがたい野菜がブロッコリー。ブロッコリーはほぼ一年中収穫されるのですが、一年で一番出回る量の多いのが3月です。スーパーに行けば季節を問わずほとんどの野菜が手に入る時代でも、やはり旬のもののおいしさや栄養価、コストパフォーマンスにはかないません。
この時季に収穫量が多いのが愛知県です。なかでもブロッコリー栽培が盛んな田原市の愛知みなみ農業協同組合田原洋菜部会の山田左門さんは、「風が強いなかゆっくり育つ冬のブロッコリーは、花蕾の粒が細かく、軸が太くがっしりしておいしい」と言います。
おいしいだけではありません。ブロッコリーはその栄養価の高さから、今注目されている野菜なのです。
まず、βカロテンやカルシウムの吸収を助けるビタミンKなどのビタミンや、カルシウムや鉄などのミネラルが豊富。また、βカロテンのほかルテイン、スルフォラファンなど抗酸化物質が多く含まれ、がんの予防によいとされています。ビタミンCも豊富なのですが、水に溶け熱に弱い性質なので、天ぷらにして衣で流失を防いだり、加熱時間を長くし過ぎないようにするといいでしょう。
ブロッコリースプラウト
ブロッコリーの原産地は地中海沿岸。古代ローマではすでに食用にされていた歴史ある野菜ですが、日本への渡来は明治期、一般に普及したのは1980年代と、日本人にとっては比較的“新しい”野菜です。しかし、クセがない味と栄養価の高さが健康志向の現代人に受け、急速に広まりました。家庭でも使いやすい野菜の1つになりました。
ちなみに、姿の似ているカリフラワーは、ブロッコリーから生まれた野菜。キャベツも同じケールから発生した野菜で、いわば親戚に当たります。
近年は、茎まですべて食べられる「スティックセニョール」や、もやしの状態で食べる「ブロッコリースプラウト」の人気が高まっています。スプラウトはサラダなど生のまま食べられるので、調理によりビタミンCなどが損なわれにくいのも利点です。
ブロッコリーをおいしく食べるには
緑が濃く、かたくこんもりとしているのが新鮮な印。黄色っぽく蕾が開いているもの、切り口が黒ずんでいるものは避けましょう。
紫がかっているのは色素のアントシアニンのため
写真提供/愛知みなみ農業協同組合
ところで、花蕾の先が少し紫がかっているブロッコリーを見かけることはありませんか? 「これはアントシアニンという色素なので、心配ありません。ゆでると真緑に変わりますが、紫がかったブロッコリーの方が甘みが強くておいしいですよ」(山田さん)
アントシアニンは、抗酸化作用がある物質です。
鮮度が味に影響しやすい野菜なので、購入したらはやめに食べ切りましょう。保存が長引きそうなら、小房に分けて茹でてから密封して冷凍に。
サラダやシチュー、グラタンなど、洋食に使われることが多いですが、天ぷらなど和食にも美味。加熱しすぎると歯ごたえが失われるので注意を。捨てられがちな茎もゆでると甘くなり、おいしく食べられます。
ただ、新鮮なブロッコリーはそのままで十分おいしいもの。「田原市の人は、茹でたり焼いたり、シンプルに食べていますよ」(山田さん)。新鮮なものを手に入れて、ブロッコリーそのものの味を楽しんでみては!?
取材協力/愛知みなみ農業協同組合田原洋菜部会、愛知県農林水産部 参考/日本食品標準成分表2015版