フランス人が一番食べているチーズ
チーズの背景を知ることで、より一層の味わい深さを感じて頂こうというこの企画。第3回目は「コンテチーズ」について紹介します。
コンテチーズは直径約60cm、高さ10cm、重さ約40kgもある、比較的大きいハードタイプのチーズです。日本ではあまり有名とはいえませんが、本場フランスでは最もポピュラーなチーズだと言われています。
チーズにはAOP(原産地呼称保護)という制度があり、AOPに認定されたチーズは伝統的な製法でつくられた質の高い製品だという証になるのです。現在フランスには、AOPを取得したチーズが45種類あります。その中で、フランス国内での販売量第1位がこのコンテチーズです。コンテのフランス国内販売量は、実にAOPチーズ全体の23%にまでのぼります。つまりコンテチーズは、フランス人に最も親しまれているチーズだと言えるのです。
栗のようなホクホクとした食感
コンテチーズはフランスとスイスの国境沿いのジュラ山脈でつくられます。ジュラ山脈は冬が非常に寒く、夏は新緑豊かで美しい場所なので、日本では北海道が比較的近い環境と言えるでしょうか。コンテチーズは牛が食べたエサの味がダイレクトに反映されるので、ジュラ山脈の香り豊かな牧草を食べて育たなければならないと決められています。
フランスのジュラ地方
味は「牧草の味」と言う人もいれば、「栗のようにホクホクしている」「きな粉を固めたようだ」などと表現されることが多いようです。確かに栗のようにホクホクしていて牛臭さもありますが、それでいてミルクの甘味があり、食べ飽きません。この毎日食べても飽きがこない優しい味わいこそ、コンテチーズがフランス人に広く愛される秘密と言えます。
熟成は8ヵ月から12ヵ月くらいがおすすめ
コンテは、比較的日持ちするチーズです。つくり始めてから最短4ヵ月で食べることができますが、最長では2年ほど持つと言われています。しかし、チーズは発酵食品です。みなさんご存知のように、発酵食品には食べごろがあります。ですから実際に「熟成48ヵ月のコンテチーズ」でも食べることはできますが、フランス人には決して歓迎されません。
コンテチーズ生産者協会の発表によると、一般的にコンテの食べごろは熟成8ヵ月です。8ヵ月のコンテチーズには、熟成が進んだ旨味成分だけでなくミルクの味わいが残っています。そのバランスがちょうどいいのが8ヵ月なのだそうです。
しかし、「日頃からチーズを食べ慣れていない日本人の口には、熟成12ヵ月がいちばん合う」という意見もあります。熟成12ヵ月になると味や旨味が強く出て、「美味しい」という感動が味わいやすいそうです。もちろん、なかには熟成18ヵ月がいちばん好きという人もいます。キムチでも、熟成が進んで少し酸っぱいほうが好みという人もいますから、そこは個人の感覚によるところが大きいのでしょう。
コンテチーズは、原則として熟成期間が表示されていますから、皆さんも熟成期間別に食べ比べてみて、「マイベスト・コンテチーズ」を探してみてはいかがでしょうか?