イカの塩辛は普通、イカの身を細く切り、そのイカの肝を塩でしめて身と肝をあえて作る発酵食品です。しかし、身と肝でいかの種類が異なる“ハイブリッド”、ヤリイカの身とスルメイカの肝で作ったイカの塩辛は、格段においしいのをご存知ですか?
身がおいしいヤリイカ、肝がおいしいスルメイカ
ヤリイカは冬が旬。身質が非常に良く、アオリイカと並ぶ高級イカの仲間です。比較的身が柔らかく、刺身に向いています。うま味もイカの中では多く含んでいますが、肝(肝臓)はほとんどありません。これに対しスルメイカは、身質がヤリイカよりも硬く、うま味、甘みは生ではやや少ないですが、その肝はふっくらとして、大ぶりで濃厚なうま味があります。この両者のいいとこどり、ヤリイカの身にスルメイカの肝で作った塩辛はまさに絶品です。
ハイブリッド塩辛を作ろう
塩辛作りは一度覚えてしまえば、ごく簡単。材料さえあればすぐできて、作りたてから発酵が進んでまろやかになるまで、さまざまな味の変化が楽しめます。
【材料】
・ヤリイカ:1杯(写真下)
・スルメイカ:1杯(写真上)
・塩:ヤリイカの身用に小さじ1程度
※肝は全体に強めにまぶす程度
・みりんまたは酒:小さじ1/4
※水切り用ざると受け皿も用意する
【作り方】
1./ヤリイカ、スルメイカとも背中(ビニールのような甲が付いている方)に親指をぐっと奥まで入れながら、肝と付いている身の部分をはがす。はがしたら、足を持ってそっと引き抜くと肝が取れる。そっとやらないと肝が切れて使えなくなるので要注意!
2./肝に付いている肝以外の物を取ったら、目の上の部分で肝を切り離す。あまり肝寄りに包丁を入れると肝が破けるので注意。
スルメイカの肝(写真上)はぷっくり、ヤリイカの肝(写真下)はほとんどない。
3./スルメイカの肝から墨袋をはずす。墨袋は肝に縦に通っている細い袋。これをつまんで静かに引っ張ると肝からはがれる。
4./ヤリイカの身から耳をはがす。身の皮を剥(む)くかはお好みで。剥かなくても食べたときにさしさわることはない。写真右下は身から取って捨てる目、トンビ(口)、墨袋、2本ある長い足の先。吸盤がきついので、この長い足2本は先を切り取っておく。
5./耳と身、足を3~5mm程度の幅に切る。身は縦に包丁を入れて割き、縦半分に2枚にしてから、それをザクザクと切っていく。
6./水切り用のざるに、切った身、耳、足を入れ、塩を全体にまぶしてよく混ぜる。肝はやさしく手にとって、塩をきつめに全体にまぶしてざるに寝かせ、冷蔵庫で一昼夜、受け皿をあてがって水を切る。水をよく切らないと出来上がりが水っぽく生臭くなるので注意。
7./水を切った肝をまな板に置き、縦に包丁を入れて割き、包丁で皮から肝をこそげ取る。こそげ取ったら皮を取り除き、包丁で肝をたたいてなめらかにする。
8./容器に身と7、みりんか日本酒(甘めが好きならみりん、辛めなら日本酒)を入れて清潔な箸でよくかき混ぜる。その後1日1回、箸でかき混ぜて発酵を進ませる。
食べてみるとヤリイカの身はやわらかく、スルメイカの身の塩辛とは一味違います。作り立ては、身がまだ刺身のような状態で肝あえという感じですが、3日後ぐらいから塩のカドが取れ、1週間ぐらいすると発酵が進んだまろやかな味になりました。スルメイカの身はイカ焼きにしておいしくいただきました。
作り立て。肝あえの風情。さっぱりした感じ。
5日後。肝の色が濃くなり、塩のカドが取れて濃厚な味に。