「みそ汁は好きだけれど、塩分が……」という声を聞きます。
確かに日本人は塩分を摂りすぎだとされています。日本の成人の1日あたりの平均食塩摂取量は、目標量の男性8g未満、女性7g未満に対して、男性11.3g、女性9.6g。これを1年間で考えると約1kg、家庭用に市販されている大きな塩(500g入り)で2袋。そう考えると、体へ負担をかけているという話もうなずけます。
みその塩分含有量は100g中10〜12g程度。みそ汁1杯では、塩分摂取量が1.5〜2g程度とされています。
それでは、みそ汁は控えた方がいいのでしょうか?
2013年12月に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されましたが、その背景には「1汁3菜」を基本とした日本の食事スタイルが、日本人の健康を守ってきたということがありました。
小泉武夫先生(東京農業大学名誉教授・当サイト総合監修者)は、常々「1汁3菜を基本とする日本の伝統食は、腸内の善玉菌を育てるのに優れている」と語っています。
「みそ汁の塩分が健康を害する」と言われてきたなかで、異なる研究結果(疫学調査)もあります。それは「みそ汁の摂取頻度が高くなるほど胃がんの死亡率が低くなり、毎日みそ汁を飲む人ではほかのがん、動脈硬化性心臓疾患、高血圧、胃・十二指腸潰瘍、肝硬変などの死亡率が低くなった」というものでした。
ほかにもがんのマウスやラットにみそを与え、がんの進行を遅らせる効果が認められた実験や、みそ汁の摂取習慣のある人で胃疾患が少ないとする報告などがあります。
みそ汁と塩分問題は、上手に摂るということでみそ汁に軍配が上がったといってよいでしょう。
また、プロバイオティクス〔腸内フローラ(細菌叢)を改善するのに役立つ善玉菌やそれを含む食品など〕としてヨーグルトが人気ですが、みそは、日本伝統のプロバイオティクス食品なのです。
みそ汁には、わかめやとうふ、大根などさまざまな具を入れます。これらが良質のたんぱく質や、食物繊維、ビタミン、ミネラルの補給源となることも見逃せません。
ただし、「みそ汁は塩分を摂る」という意識があるのは、悪いことではありません。同じ1杯のみそ汁でも具だくさんにして、汁を少し控えめにしたり、余分な塩分を排出する働きを助けるカリウムを多く含む野菜を具に加えるなど、工夫をするといいでしょう。また、「みそ汁を食した」ときは、塩分含有量の多い加工食品や外食を控えるのもよいでしょう。
大切なのは、食事全体のバランスを考え、何が自分に必要か判断していくことでしょう。
〔参考:「発酵食品礼賛」(小泉武夫、文春新書)、「発酵食品学」(小泉武夫編著、講談社)〕