食品の優等生さつまいものルーツ
さつまいもが薩摩(現在の鹿児島県)から日本各地に伝えられ、江戸時代の飢饉では多くの人々の命を救ったのは有名な話です。さつまいもの痩(や)せた土地でもよく育ち、栄養価が高いという特徴がいきたのです。青木昆陽(あおき こんよう)が『蕃薯考(ばんしょこう)』を記したことをはじめ、各地にさまざまな逸話が残されています。
原産地は中米から南米にかけてとされ、コロンブスがヨーロッパに伝え、やがてアジアにも広まりました。薩摩へは琉球(現在の沖縄)から伝わったために、「琉球いも」と呼ばれていました。
救荒食に使われた実力
まず、セルロースやヤラピンなどの食物繊維が豊富です。セルロースは腸内環境を整えて便秘改善が期待できます。ヤラピンとは、さつまいもを切ったときに滲(し)み出てくる白い汁の成分で、腸のぜん動運動を促進することで便秘解消などに役立ちます。
また、余分な塩分を排出して高血圧予防によいカリウムや、美肌効果が期待できるビタミンC、抗酸化作用の強いビタミンE、βカロテンも豊富です。
ビタミンCは水溶性のために流出しやすく、加熱や空気に触れることでも損失しやすいビタミンなのですが、いも類のビタミンCはデンプンで守られているため壊れにくいという特徴を持っています。しかも、さつまいものビタミンC含有量はいも類ではトップクラスです。
さつまいもの栄養成分
おいしいさつまいもとは?
さつまいもの旬は10月〜1月。収穫は8月から秋にかけて行われますが、収穫後2ヵ月程度たった方が余分な水分が抜け、風味が増しています。
選び方は皮に張りがあり、傷やしわのないもの。手に持ったとき、ずっしりと重みがあるものがいいでしょう。ひげ根が多いと食物繊維が多くなります。
食べ方は、煮物から揚げ物、スープ、お菓子、パンの具材とさまざま。冬の時期に人気が高いのは、焼き芋です。さつまいもはゆっくり加熱することで糖度を増しますが、その特徴を存分にいかした調理法だといえるでしょう。
さつまいもの皮の紫の色素はアントシアニンという抗酸化物質です。ほかのビタミンやミネラル類、前述のヤラピンも皮や皮近くに豊富に含まれているので、皮ごと食べるのがおすすめです。
[参考 『日本食品標準成分表2010』、『日本食材百科事典』(講談社編)、『たべもの語源辞典 改訂版』(清水桂一、東京堂出版)]