【歴メシを愉しむ(104)】猪ラフテーと春のお墓参り

カテゴリー:食情報 投稿日:2021.04.09

例年よりも早く咲き誇っていた満開の桜は、続く禍(わざわい)の下、お花見こそ出来なかったものの、少しは心を晴らしてくれた。先日降った花散らしの雨で、桜は花嵐となって散ってしまった。桜の季節が終わりを告げたのは残念だが、春はいよいよ本番を迎えている。

 

春らんまん 清明の時季

さて 桜の次に、一人静かに春を楽しむには何かと考えていると、いいことを思いついた。それはお墓参りである。「えぇ~、なんでお墓参りが?」と思う方も多いだろう。それには理由があるのだ。

今は旧暦二十四節気の「清明(せいめい/4月4日~19日)」の時季。「清明」は、春の暖かな陽射しを受け、天地万物が清らかに生命を輝かせる頃である。また、「踏青(とうせい)」ともいい、昔から清明には、野山に出かけて青い草を踏み、春を楽しむという風習があった。元々中国から伝わったもので、中国では現在でも「清明節」として先祖の墓参りなどに出かける祝日となっている。

日本でも旧暦の風習を今も残す沖縄では清明節に、「清明(シーミー)」「御清明(ウシーミー)」と呼ばれる祖先供養の墓前祭がある。沖縄ならではの前庭を広くとってある大きな亀甲墓(かめこうばか/きっこうばか)」の前に親戚一同が集まって、先祖に供物を供えて会食をする。他の地方で行われる春秋のお彼岸や盆の墓参りに相当するものだが、「シーミー」は祝い事として行われる。季節もよし、墓前は広く、持参した伝統のご馳走や泡盛などの酒で宴を開き、先祖と共に皆でいただきながら、三弦(さんしん)の音に合わせて歌ったり踊ったり、賑やかに先祖をもてなして楽しむのである。

 

新しいスタイルの墓参りで父と語り合う

こんな楽しい墓参りならぜひ真似てみたい!と、早速準備に取りかかった。

シーミーのご馳走の内容だが、「御三味(ウサンミ)」という鶏、豚、魚を蒸したものや、沖縄の豚肉料理に欠かせない三枚肉(豚バラの塊肉)の煮付けにカステラかまぼこ、昆布やごぼうの煮しめ、揚げ豆腐、魚天ぷら、祝い事ならではの赤い蒲鉾や赤い餅などを詰めた華やかな重箱料理である。

ふむ、これはちょうどいい。猟師デビューを果たした猟期が3月15日に終わり(兵庫県の猟期)、冷凍庫には猟期に仕留めた猪のデカイ肉塊がどっさりと眠っている。豚三枚肉の代わりに、この猪肉を煮込んでラフテー(角煮)を作って、亡き父が好きだった日本酒をかついで行き、大いに墓前で語り合おう。

沖縄とは違って実家の墓は小さいし、墓前のスペースも狭いが、銃猟のため入手した折り畳みチェアを置くぐらいのスペースはある。お彼岸でもないこの時季、お墓参りに来る人もまずいないので、不審に思われる心配はない。うってつけではないか!…と、これが、桜の次に、一人静かに春を楽しむプランである。いや正確には、一人ではあるものの墓に向かって語りかけているので、静かではないかもしれない。(笑)

何もラフテーでなく、ちょっとしたおつまみとお酒(あくまでも墓前のお供えとしてである)を提げて行くだけでもよい。ご先祖の供養もできて、密にならずに春を楽しめる清明のお墓参り、皆さんも体験されてはいかが。

 

<ラフテー(猪肉/豚肉いずれか塊で600~800g)の作り方>

(1)お湯で洗った肉塊を鍋に入れ、たっぷりの熱湯を加えて火にかけ、煮立ったらアクをすくい、弱火にして1時間ほど茹でる。冷ました後、適当な大きさの角切りにする。

(2)鍋に鰹出汁3カップ、泡盛1カップ、砂糖大さじ2・醤油大さじ1ほど(好みの味に調整)を入れて火にかけ、(1)を入れる。煮立ったらアクをすくい、弱火にして、1時間ほどじっくりと煮る。途中で醤油大さじ1を足し、肉が柔らかくなったら火を止めて、そのまま鍋の中で味を染み込ませる。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

発酵手帳2021、大好評発売中!

365日その季節に合った発酵食品のレシピや、小泉先生のコラム、付録には発酵食品をいつ作ったらよいか一目でわかる「発酵カレンダー」、発酵食品を作った際の日時、温度、分量などを記録できて次に役立つ「発酵手仕事」、「味噌特集」など、発酵食品好きにはたまらない「発酵手帳2021」が3年目を迎え、さらにパワーアップして大好評発売中!ぜひお役立てください。Amazonで大好評発売中です!

 

 

  •                    

\  この記事をSNSでシェアしよう!  /

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう!
小泉武夫 食マガジンの最新情報を毎日お届け

この記事を書いた人

編集部
「丸ごと小泉武夫 食 マガジン」は「食」に特化した情報サイトです。 発酵食を中心とした情報を発信していきます。

あわせて読みたい