「凍(こお)り豆腐」(こうや豆腐)は、豆腐を凍らせて干す加工品。冬の寒気を利用して東北地方や信州などで古くから伝わり、地域によっては“凍(し)み豆腐”とも呼ばれる。
長野県の佐久地方に伝わる「凍み豆腐」は、薄く切り分けた豆腐を一晩外で凍らせた後、1枚ずつワラで編んで、1週間~10日ほど軒先に干し、昼夜の温度差で“凍る”と“溶ける”を繰り返すのが特徴だ。高野山の精進料理で有名な「こうや豆腐」は、戸外で一晩凍らせた豆腐を日中も氷点下になる屋内に干し溶かさない…など、厳密に言えば、地域によって昔ながらの手作りの手法に違いはあるが、いまは工場生産のものがほとんど。
凍り豆腐には、良質な植物性タンパク質が約50%、植物性脂質が約33%含まれ、そのほかにカルシウム、鉄分などの成分も有していて、栄養バランスに優れている。
長野県凍り豆腐工業協同組合・こうや豆腐普及委員会は、「凍り豆腐を食べ続けると、血中中性脂肪濃度が下がりコレステロール値を抑制し、動脈硬化指数を低下させる」との研究成果を発表した。同組合専務理事の古畑洋一さんは、「凍り豆腐の健康効果をPRして人々の健康長寿に寄与していきたい。凍り豆腐中のタンパク質は、原料である大豆のタンパク質の1.5倍以上もレジスタントタンパクを含んでいて、いま注目されています」と話す。
レジスタントタンパクとは、体に入っても消化を受けにくいタンパク質の部分。腸内において胆汁酸(コレステロールから作られる)と結合し、ともに排出されるため、余分なコレステロールを減少させ、脂質の吸着効果もある。製造過程における凝固・凍結・乾燥といった加工が、タンパク質を変性させ、レジスタントタンパクを増やしていると考えられる。
調理は、卵とじや味噌汁、煮物などいたって簡単。保存食だから一年中楽しめ、生活習慣病の予防にもなる。
参考資料:農林水産省「新・日本の郷土食」
取材協力:長野県凍り豆腐工業協同組合こうや豆腐普及委員会