パンを保存する秘訣
発酵食品であるパンは、主食として栄養面で優れています。しかし、空気に触れると劣化が進み、どんどん風味が落ちていくのが課題です。劣化というのは、次第に固くボロボロになって香りも悪くなることをいいますが、パンには保存する温度が低いほど劣化が進むというという不思議な習性があります。そのため、冷蔵庫にしまうよりも常温の冷 暗所に置いておくほうが劣化は進まないのです。
むしろ、新鮮なうちに冷凍庫で凍結し、食べるときに凍ったまま直接トースターで焼くと、風味が損なわれません。このように保存が難しいことから、普通のパンは非常食向きとはいえないでしょう。
乾パンの美味しい食べ方
そこで非常食には「乾パン」が多く用いられます。乾パンは、小麦粉、塩、砂糖、ショートニング(パリッとさせるために入れる食用油脂)などにイースト菌を加えて発酵させ、ビスケットのように焼き固めた小型パンです。非常食や携帯食の代名詞になるくらいポピュラーな食品で、湿気がこないように密閉性の高い缶に入って市販されています。
乾パンは、水分と一緒に食べないと口の中でパサついてうまく食塊(しょっかい)を形成できないため、お年寄りや幼児はむせて誤嚥(ごえん)しがちです。のどに詰まらせると危険なので、非常時ではあっても必ず飲み物か蜂蜜や水飴と一緒に食べるようにし、乾パンだけで食事をするのは避けましょう。
都合良く牛乳か飲むヨーグルトがあると乾パンは栄養バランスの良い主食に早変わりし、 いくらでも日保ちがするので非常時の生活を支える食べものとして有効です。また、保存 が効き、甘くて美味しいのがビスケットです。これも子どもの保存食にお勧めです。
小泉武夫