毎年、この季節になると韓国でいっせいに行われるキムチ漬けは「キムジャン」と呼ばれる国民行事だ。初物の野菜が出回る春までの間に食べるキムチを一家総出で大量に漬ける。「キムジャンボーナス」を支給したり、「キムジャン休暇」を設けたりする会社もあるほど。韓国のキムチ消費量は年間150~160万t。1人当たり30kgだから1日80gずつ食べている計算になる。
「キムジャンは長く厳しい冬を耐えなければならない韓国人にとっては必ず必要な越冬の準備である。晩秋、キムジャンの季節になると、家族や親族、とくに女性を中心に集まってキムジャン(キムチづくり)をし、キムチを恵まれない人々と分かち合うことによって、冬の間の野菜を確保した」(大韓民国文化財庁)
しかし、最近は働く主婦が増えて、キムチを自宅で漬けずにスーパーなどで購入する家庭が増えているという。2001年には家庭でキムチを漬ける習慣は68.5%だったが、2010年には54.5%に減少した。市販キムチの供給元は大半が中国で、2014年の輸入量は約21万3000t。国内消費の約15%に相当する。大韓キムチ協会によると、高速道路サービスエリアでは95%以上が中国産キムチを出し、一般食堂でも90%以上が中国産キムチを使っているという。
2013年に和食がユネスコ文化遺産に選ばれたが、同じ年に韓国のキムチも登録されている。家ごとに味が違うと言われる韓国伝統のキムチ。発酵食品の優等生はいまや日本人にとっても欠かせない漬物となっているが、本場韓国の「キムジャン」がいつまでも国民行事として守り継がれることを望むばかりだ。