大活躍するカビ
あの石のように硬い鰹節の秘密は、まさにこのカビの発酵力によるものである。単に焙乾(ばいかん)しただけでは、生節(なまぶし)の表面が乾燥するだけで、内部は水分がまだ取り残されて硬くならない。また焙乾しただけの鰹節では、乾燥にムラがでて、削っているうちに表面からボロボロと崩れてしまう。だが、ここにカビを付けてやると、鰹節の表面で生育するカビは、その繁殖にかなりの水分を必要とするから、その水を鰹節の内部から吸い上げ、その水を生きる糧として利用することになる。おかげで鰹節は、内部から理想的な形で水分が除かれ、硬く乾燥することになる。
上品で強いうま味
この時、カビの生成した脂肪分解酵素は、鰹節の脂肪を分解して製品となってからの脂肪の酸化による品質上の劣化を防ぐ。またタンパク質の分解酵素は鰹節のタンパク質を分解して、うま味のもととなるアミノ酸をつくりだし、さらに、カビの作用によって一層うま味の強い型となったイノシン酸は、アミノ酸と相乗して、信じられないほどの上品で強烈なうま味を私たちに与えてくれる。