鰹節の神秘的パワー(2)【小泉武夫・賢者の非常食(39)】

カテゴリー:食情報 投稿日:2018.12.15

 世界で一番硬い食べ物

 ところで、鰹節は世界でいちばん硬い食べものだといわれています。高温多湿の状態を好むカビは、繁殖するために多量の水分を必要とするのです。そのために、カビが付着した食べものからは、水分がどんどん吸い出されていきます。カビのこの性質を利用して作られる鰹節は、一番カビ、二番カビと順々に裸節の表面から水分を吸い取っていきます。表面がカラカラの状態になっても、さらに奥の水分を吸い上げるのです。そしてついに、内部の水分をすっかり吸い取られた鰹節は、完全に乾燥した状態になります。

 日本人は古来から、カビのこのような性質を熟知していました。温帯のじめじめとした風土に生きる立場を強みに替えてきたのです。カビ以外のほかの方法、例えば火で乾燥することで水分を強制的に飛ばしたら、その節は削っている間にひび割れてしまいます。カビだけが、表面から均等に水分を吸い出すので、乾燥にムラが出ないのです。

 

 和食の出汁ベスト3

 鰹節の優れている点は、カビによって水分が完全に取り去られたために、ほかの微生物は繁殖できず、保存性が高まることです。また、発酵に大量の麹カビを使うので、内部に酵素が浸透して芳醇なうま味を形成します。さらに、鰹節に付着したカビは、繁殖中に油脂分解酵素リパーゼを分泌しての油脂を脂肪酸とグリセリンに分解し、さらにその分解物を食べてしまうのです。そのため、生の状態では脂ぎっているですが、鰹節になると出汁を取ってもまったく脂が浮きません。

 このように鰹節は、上品で格調高い和食の出汁にふさわしい食材として完成されているのです。ちなみに、和食の出汁のベスト3に数えられる鰹節、昆布、干しシイタケは、どれも脂が浮きません。西洋料理や中国料理のブイヨンや鶏ガラ、豚足、牛のテールが表面に脂の浮いたスープを形成するのとでは大きな違いがあります。

小泉武夫

 

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この記事を書いた人

編集部
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