鰹節が発酵食品だと聞くと多くの人は意外に思うかもしれません。鰹節の中でも「枯節(かれぶし)」は発酵の助けを借りてうま味を増した立派な発酵食品なのです。原材料、製造方法、また、鰹節になった後の削り方の違いなどにより、味も香りも用途も格段に異なる食材です。これから3回に分けて奥深い鰹節の世界を紹介します。
まず第1回目は製造方法の違いについて。
鰹節は製造方法によりカビをつけないで仕上げる「荒節(あらぶし)」と、荒節の表面を削り取った後の節(呼称:裸節)に鰹節カビ菌をつけ発酵後天日乾燥を2回以上繰り返して仕上げる「枯節」に分けられます。
【荒節】
「荒節」は現在、市販の鰹の削り節、業務用のだし抽出用の節を合わせると鰹節の約90%を占めています。このため、鰹節といえば「荒節」の味と香りと思われることも少なくありません。
「荒節」の削り節商品には、名称が「かつお削りぶし」、原材料名が「かつおのふし」または「かつお・ふし」と表示されています。
味・香り・食味のポイントは製造方法の煮熟(しゃじゅく)と焙乾(ばいかん)にあります。煮熟は捌(さば)かれたカツオの芯までしっかりと煮上げます。焙乾は大量の薪を燃やし熱と煙で燻(いぶ)しながら乾燥する鰹節のメイン工程です。仕上がった荒節を削って味をみてみると、燻しの香りが芳ばしく鰹の香味とうま味が口内に広がります。
荒節の出汁は醤油との相性が良く醤油を引き立てますので、煮物、うどん、そばなどのつゆ向きです。
煮熟
焙乾
【枯節】
「枯節」は市販の削り節、日本料理のだし用として鰹節の約10%のシェアです。製造工程に手間がかかり、コストが高いことも流通量が少ない一因です。
「枯節」の削り商品には、名称が「かつおかれぶし削りぶし」、原材料名が「かつおのかれぶし」または「かつお・かれぶし」と表示されています。
味・香り・食味のポイントは鰹節カビ菌による発酵法です。「荒節」の燻し香の強い表面を削り取った裸節に優良のカビ菌をつけ、発酵を促す温度と湿度を調整した部屋で静かに発酵が始まります。鰹節カビはゆっくりと時間をかけて裸節内部の水分を引出しより乾燥し、酵素もはたらき、節の香気は高まります。仕上がった枯節を削って味をみてみると発酵熟成した肉質からほのかに立ち上がる香りはやさしく上品で、甘味うま味が一体となって口内に広がります。
枯節のお出汁は素材を引き立てる料理向きです。吸いもの、汁もの、含ませ煮など素材の美味しさが引き立ちます。
このように製造方法によって鰹節は味も香りも異なります。それぞれの特長ににあわせて調理すれば、あなたの料理がプロの技に一歩近づくことになるでしょう!
※協力/イズミ食品株式会社