魚の干物(ひもの)をあなどってはいけない!【小泉武夫・賢者の非常食(2)】

カテゴリー:食情報
投稿日:2018.02.10

日本人は魚食民族

 炭水化物の保存食の代表格がサツマイモだとすると、タンパク質の保存食の代表格は魚の干物です。日本は、国土の面積に対して川の数がとても多いという特徴があります。それは、「馬の背国」といって、北海道も本州も四国も九州も、みんな中央に山脈が盛り上がり、馬の背のようになっているからです。そのため、海に囲まれた島国でありながら、世界有数の川の多い国と言っても過言ではありません。その川には、アユ、マス、イワナ、ヤマメ、ウグイ、ウナギなどの淡水魚が無尽蔵(むじんぞう)にいました。

 それらの川魚は、冬には獲(と)れないので、夏場に獲れるだけ獲って、干して冬に食べます。河口には、サケなど産卵のために遡上(そじょう)する魚が群れをなしていますから、網を張って獲り放題です。遠洋漁業などなかった古代の日本では、川と河口で十分な魚が獲れました。海で獲った魚は塩蔵(えんぞう)します。北海道ならサケの新巻(あらまき)を作り、新潟県の村上(むらかみ)市なら塩引き鮭を作るなど、風土に合った保存食を生産してきました。

 実は今でも日本人は、肉食民族ではなく、魚食民族なのです。川や海から魚というタンパク源を豊富に得てそれを食べてきたDNAが色濃く残っているはずなので、魚が苦手という若い人も、本来は食べられないはずはないのです。

 

干物と粗料理に食の知恵

 保存食としての干物は、日本人が得意としてきた食べ方といえます。干して魚介類の水分を飛ばすと、微生物の繁殖が抑えられて腐敗は防げるばかりでなく、栄養成分も凝縮され、さらに、味まで濃くなります。海の魚は素干しに、川の魚は焼き干しにすることによって、季節を超えた美味しい保存食をつくってきました。

 こうして魚の干物は、日常的に鮮魚の流通を補完する第2の食べ方として確固とした食文化を築き、同時に保存のきく救荒食品としての役割も果たしたのです。

 魚の食べ方でもうひとつ、忘れてはならないものに粗料理(あらりょうり)があります。魚は身を食べるだけではなく、頭も骨もヒレも皮も、血合い、はらわた、卵巣や白子(しらこ)などまで、捨てるところがないくらい食べ尽くすことができるのです。

 食べ方にしても、粗煮、粗焚き(だき)、甲(かぶと)煮、甲焼きと多彩な粗料理があります。日頃から魚をしゃぶり尽くすように食べていた日本人ですが、飢饉ともなると魚の粗は大御馳走(おおごちそう)でした。魚の粗が、救荒食として重要な食べものであったことは、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

小泉武夫

 

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この記事を書いた人

編集部
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