なぜ日本人はキレるようになったのか?【小泉武夫・食べるということ(4)】

カテゴリー:食情報 投稿日:2017.05.12

 キレやすくなった日本人

 2009年12月1日、とてもショッキングな記事が新聞の一面に掲載されました。【小中学校の暴力6万件、2008年度 3年間で7割増】(朝日新聞社・朝刊)。6万件のうち、3万2445件(54%)は生徒間の暴力。1万7329件(29%)が器物破損。そして8129件(14%)が、なんと先生に対する暴力です。

 自分が子どもだった頃のことを思い出してみてください。日本の子どもたちはどうなってしまったのだろう……。そう感じるのは、私だけではないはずです。

 私もいたずら坊主でしたから、友だちとケンカをすることはよくありました。しかし、相手を傷つけるような暴力をふるったこともなければ、ふるわれた覚えもありません。先生からゲンコツを食らって、頭に大きなタンコブをつくり、それを父親に告げたら、「おまえが悪い」と言われて二つ目のタンコブをこしらえたことはありましたが、先生に暴力をふるうなど、私の少年時代には考えられませんでした。

 それが、今は違うのです。相手を傷つけたり、物を壊したりする子どもが非常に増えている。正確に言うならば、子どもに限った話ではありません。日々の犯罪のニュースを聞いていると、大人たちも含めて、いわゆる「キレやすい」日本人が驚くほど増えているのです。

 興味深いデータがあります。心の起伏度を1〜5のランクで測定した心理テストです。「5」は心が非常に穏やかで、やさしくて、明るく、協調性が保たれている状態です。逆に「1」は、攻撃的で短絡的で感情的な状態を示します。

 このテストによれば、昭和30〜40年代の日本人平均は「4.7」でした。当時の日本人は、とても穏やかな心を持っていたのです。ところが、現代の日本人に同じテストを実施すると、「2.7」にまで下がっているのです。

 

 和食離れで日本人が失ったもの

 穏やかだった日本人が、わずか50年の間にキレやすい民族に変わってしまった。その理由が、和食離れにあると言ったら、どう思われるでしょうか? 短絡的な意見のように聞こえるかもしれませんが、これは根拠のある話なのです。

 戦後、日本人の肉や油の消費量が急激に増えたことはすでに述べましたが、正反対に、大幅に減ってしまったものがあります。それがミネラルです。

 土に多いミネラルといえば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、燐、硫黄などがあります。海に多いミネラルには、ナトリウム、マンガン、ヨウ素、クロム、亜鉛などがあります。ミネラルは、糖質、脂質、タンパク質、ビタミンと並んで、人間に欠かすことのできない五大栄養素の一つですが、そのミネラルの消費量が、戦後50年で4分の1にまで減ってしまったのです。

 日本の水にはミネラルが少ないと言いました。しかし、かつての日本人は日常の食べ物の中からミネラルを大量に摂取していたのです。

 昔から日本人が食べてきた和食の材料は、八種類しかありません。一番目は、イモやゴボウなどの土の中にできる「根茎」です。二番目は、白菜やほうれん草などの「菜っ葉」です。三番目は「青果」。果物の他、トマトやキュウリなどのみずみずしい野菜のことです。四番目は、自生する「山菜」の仲間。キノコもここに入ります。五番目は「豆」です。六番目は「海藻」です。七つ目は米や麦などの「穀物」。そして、八番目が動物性タンパク質で、日本では「魚」が中心でした。

 八種類のうち、「魚」以外はすべて植物です。では、植物が何を食べているのかというと、各種のミネラルです。植物の組織は繊維とミネラルでできています。日本人は、菜食という食生活を習慣にすることによって、植物からたくさんのミネラルをいただいてきたのです。

小泉武夫

 

※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。

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この記事を書いた人

編集部
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