さる9月30日(金)、東京日本橋のYUITO(日本橋室町野村ビル)6階大ホールにおいて, NPO法人発酵文化推進機構の秋の講演会と懇親会が開かれた。基調講演は小泉武夫理事長による「菌体と健康機能」。
小泉武夫理事長
近年、肉食に偏ってきた日本人の食生活に、微生物が果たす役割は大きいと指摘する。肉アミノ酸といっしょに腸に運ばれてきた悪性菌によって酸化したからだも野菜を一緒に摂ることでバランスが保たれるようになるが、これも微生物の働きによるものだという。0.001mm(1ミクロン)という目には見えないサイズの微生物の大きな働きに参加者も大きくうなずいていた。
続いて、保井久子氏(元信州大学大学院農学研究科教授)が、「すんき乳酸菌Pediococcus pentosaseus Sn26 の保健機能」について講演。
保井久子氏
すんき漬けは、長野県木曽地方の伝統的な無塩乳酸発酵の漬物(カブナの漬物の一種)。アレルギーを予防・軽減する乳酸菌株をすんき漬けから分離することが出来、これをマウスに投与するとアレルギー抑制効果が見られた。また予備調査では、長野・松本地域に比べてアレルギー患者数が、木曽地方のほうが少なかったという報告がなされた。
すんき漬けの漬け込み風景
今野宏氏(株式会社秋田今野商店代表取締役社長・農学博士)は、「〈テンペ〉の発酵とテンペ菌群について」。テンペとは、大豆などをテンペ菌で発酵させた食品。(【発酵食品の切り札!「テンペ」を知っていますか?】参照)。テンペに含まれる健康成分と期待される健康効果については、吸収されやすいタイプのイソフラボンは、発酵によって増殖することが認められ、活性酸素の除去、動脈硬化の予防、血圧の上昇を抑える、骨粗鬆症の予防などが報告された。これからテンペに注目が集まることが予感される講演内容だった。
今野宏氏
テンペを包み込むバナナの葉
最後に登壇した和久豊氏(株式会社ビオック常務取締役・農学博士)は、「〈火腿〉の発酵と発酵菌群について」。金華火腿(日本では金華ハム)は、中国・浙江省の金華地区で生産されるハムの一種。イタリアのプロシュット・ディ・パルマ、スペインのハモン・セラーノと並ぶ世界三大ハムの1つといわれている。金華火腿は発酵することによって、飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸へと劇的に変化する製造工程などが詳しく報告された。
和久豊氏
講演会終了後、日本橋豊年萬福に会場を移し、懇親会が開かれた。
11月12・13日(土・日)に甲府で開かれる
「発酵サミットinやまなし」の案内も