異なる産地の珈琲豆を掛け合わせれば「ブレンドコーヒー」。タイプの異なる味噌を掛け合わせた「合わせ味噌」。ブレンドが主流な食べものは意外と多い。しかし、お米のブレンドに関しては、どうでしょう。
「ブレンド米」と聞くと、コシヒカリなど高値のお米に古米や別の品種を混ぜた“偽造米”を連想する人が多いのが現状。
1993年の大冷害時に登場した国産米とタイ米のブレンドの評価が低かったこともあり、ブレンド米は「偽物」「混ぜ物」といった芳しくないイメージを持たれるようになってしまった。
ところが、今、異なる品種のお米を混ぜて味わう「ブレンド米」が注目されている。別の品種をブレンドすることで、単一品種では出せない味を自在に表現できるのだ。合わせるおかずや食べるシーンなどによってお米の配合を変えるという食べ方は、お米の楽しみの幅を広げてくれる。
京都・祇園と東京・銀座に「米料亭」を構える京都の老舗米店「八代目儀兵衛」では、料理に合わせたブレンド米を展開。「料理米」シリーズでは、おむすびに合うブレンド米、和食に合うブレンド米、洋食に合うブレンド米、チャーハンに合うブレンド米など、12種類を提案している。
八代目儀兵衛
ブレンダーを務める五ツ星お米マイスターの橋本隆志社長は、「『おいしいお米はどれですか?』という質問をよく受けるのですが、料理によっても変わります。そのまま食べるとおいしいお米でもお粥に使うと溶けてしまったり、チャーハンをつくっても米粒がぱらりとしなかったりと、料理によってお米が生きる場合もあればそうでない場合もあるのです」と話す。
橋本隆志社長
お粥に合う品種で作った
橋本社長によると、ブレンド米は、単にお米とお米の足し算ではなく、相乗効果によって掛け算の味を生み出すのだという。「そのときのお米の状態に合わせてブレンドする品種や配合を変えるのですから、『一期一会』のお米と言えるでしょう」。
いつも食卓にあって当たり前の存在となっているお米。しかし、その味わいは、品種や産地、作り手、時期によってさまざま。ブレンド米は、それぞれのお米が持つポテンシャルを最大限に引き出す食べ方と言えるだろう。
かつては、米店がそれぞれの店の看板商品としてオリジナルブレンド米を展開していたという。改めて注目してみてはどうだろう。
※写真提供:八代目儀兵衛
取材/文:柏木智帆