江戸時代、一般の家庭では朝に炊きたてのご飯と納豆汁で、その日のパワーを付けるのが定番でした。そのため、江戸の町では毎朝、夜明けと共に納豆売りが長屋の隅々までやってきて、庶民の食卓を支えていました。もちろん経木に入った納豆でした。現在のような容器のなかった時代の経木を見直してみませんか?どうせ食べるなら経木入りの納豆でワンランクアップ!
なぜ経木入り納豆が良いのか
経木(きょうぎ)とは、木を削った薄い板のことで、主に赤松をカンナのような刃物で鰹節を削るように薄く削り出して作ります。発泡スチロールなどがなかった頃は、食品の包装用などで盛んに使われていました。
経木には、松脂(まつやに)による天然の抗菌作用、適度な通気性と保湿性、独特の芳香があり、さらに天然のうまみ成分を持つとも言われています。この天然のやさしさに包まれた快適な発酵環境のもと、納豆菌がストレスなく活動してできた納豆は、豆がふっくらとした深い味わいになり、発泡トレイ入りのものとは一線を画します。
発酵だけでなく、保存の面でも経木に軍配が上がります。納豆は古くなるとアンモニア臭がし、白い斑点(チロシンの結晶)が出てじゃりじゃりした感じがするため味が悪くなります。冷蔵庫(5℃)で保存する場合、アンモニア臭がしはじめるのは発泡トレイでは9日目、経木では14日目から、じゃりじゃりした感じは発泡トレイのみに18日目から現れました(府中保健所調査より)。つまり、経木は発泡トレイよりも納豆をより良い状態に保つことができるのです。
経木入りの納豆にしてみた!
最近、経木入り納豆を見かけることは少なくなりました。そこで通販などでも売られている経木(Amazonなどで購入可能。100枚で500円前後)を購入し、見よう見まねで三角形に折り、発泡スチロール容器に入った納豆を取り出して詰め替え、冷蔵庫で1日置いてみました。
赤松の経木。木の良い香りがする
経木は納豆の水分を吸ってしっとりし、開けてみると何とも言えない経木の芳香。納豆は乾くこともなく適度な湿度を保っていました。食べてみると、心なしかうまみが増してなんとも優しい味がしました。残った経木は、魚の水切りやおにぎりを包む、煮物の落としぶたに使うなど応用範囲は広く、かつ自然素材なので安心して使うことができます。
経木に包んで1日後。経木も豆もしっとりと
経木が山を育て、海を豊かにする
経木の材料の松を育成するためには、山林の間伐(かんばつ)、適正な管理をして山を良い環境にする必要があります。山が良い環境になると、山の土壌の栄養分が豊富になり、それが川を通して海を豊かにすると言われています。