近年、日本人には大腸ガン、潰瘍性大腸炎など消化器官の疾患が増え続けている。原因はさまざまあるが、日本人と大腸ガンなど消化器疾患と食の関係について小泉センセイに訊いてみた。
「こうした背景のひとつに肉食との関連が指摘され、欧米化した食生活で平均寿命を大きく下げた沖縄県の例があります。人間の体は、生活環境に対応していけるようつくられてきました。日本人という民族の遺伝子と関係があるのです。元来、日本人が食べていたのは和食の主材となる7つ。根茎、菜、青果、山菜とキノコ、大豆、海藻に穀物。体が植物食に順応するようにできているのです。牛乳を飲み、肉を食べてきた欧米人とは遺伝子が違います。にも関わらず50年前と比べると肉の消費量は約4倍に増えているのです。これほど大きな食生活の変化がもたらされた国は日本だけです。
ひきわり納豆と油揚げの味噌汁
肉を食べないとスタミナがつかないのでは? という懸念は不用です。ぜひ、おすすめしたいメニューがあります。江戸時代、日本橋と京都を結ぶ中山道を旅する人が宿で食していた『ひきわり納豆と油揚げの味噌汁』。大豆は畑の肉との別名がある通り、牛肉と大豆のたんぱく質量は変わらない。つまり肉を摂取しなくても大豆をしっかり摂れば、充分な活力源になるのです。
穀類、野菜のいいところは食物繊維がたっぷりだということ。体内に入っても分解されない食物繊維は腸を刺激すると同時によい腸内細菌を増やします。刺激された腸は蠕動運動(ぜんどううんどう)が活発になり、免疫細胞をどんどん作ります。結果、病気になりにくい体になるというわけです。ちなみに免疫力の強い人の大便は『太くて無臭、キレがよくて、みかん色』です。
肉料理にはたっぷりの野菜
もちろん、肉をゼロにしなさいと言ってるわけではありません。肉を食べてもよいのですが、その分、野菜をたくさん食べること。理想的な肉料理は野菜をたっぷり食べられる『すき焼き』です。
『食乱れて、民族滅ぶ』になってはいけません。世界遺産にもなっている和食を守り、こうした伝統を子どもたちにも伝えていかなければなりません」