映画「かもめ食堂」(2006年3月公開)で、コーヒーが美味しくなるおまじない「コピ・ルアック」を唱えてコーヒーを淹(い)れる印象的なシーンがありました。 聞き慣れないこの言葉、「かもめ食堂」の舞台となったフィンランド語なのかと思っていましたが、実はこれ、世界でも希少性の高い幻のコーヒー豆のことだったのです。しかもそのコーヒー豆は、インドネシアに生息するジャコウネコ(インドネシア語で“ルアック”)が、コーヒーの実を食べ、排泄物として出てきた豆でコーヒーに精製したものだったのです。
ジャコウネコ
オランダ統治時代の18世紀半ば、当時のインドネシアでは、プランテーションで栽培された農作物の全てがヨーロッパへ輸出されていました。インドネシア人は、自分たちが栽培したコーヒーを自分たちで飲むことはできず、もし飲めば死刑になるほど厳しいものでした。
ある日、現地を視察していたオランダ人が、コーヒーを飲んでいるインドネシア人を見つけました。「これはなんだ!」と問いただすと、「ジャコウネコの糞から取り出したコーヒー豆からコーヒーにしたものです」と答えて刑罰を免れたそうです。オランダ人が去ったあとも、人々は「Kopi Luwak(コピ・ルアック)」と呼び、インドネシアの特産物として守り育んできました。今でこそ世界に知られる高級コーヒー豆にもこんな誕生秘話があったのです。
山のなかでコーヒーの木が生い茂る
バナナや魚、果物を主食とするジャコウネコにとって、コーヒーの実はおやつのようなものだと言われています。口に含んだコーヒーの実から、まず外皮の赤い皮を吐き出し、甘い果肉をしゃぶりながら種ごと飲み込みます。飲み込んだ種は、消化されずにそのまま糞として排泄されますが、腸内の消化酵素や腸内細菌による発酵作用により、豆に独特の香味が加わり他に類のない深い味わいをもたらすのです。
コーヒーの実
編集部でも、発酵コーヒーを飲んでみました!
「ほんのり発酵された香りがする」「嗅いだことのない香りで、飲んだことのない味」「もっとクセがあるかと思いきや、飲みやすくて、独特の風味がアクセントになっている」など、さまざまな感想が出ました。
コーヒー通ならずとも発酵コーヒー、コピ・ルアックを味わってみませんか?
●アラビカ種/50g ¥3,300(Koki’s Kopi Luwak)
●ロブスタ種/50g ¥3,090(Koki’s Kopi Luwak)
※取材協力/コピ・ルアックコーヒー「Koki’s Kopi Luwak」製造・販売(LJA JAPAN株式会社)