腸内フローラ(腸内細菌叢)が健康にとって重要な意味をもつとして注目されているなか、「小学生の5人に1人(20.2%)が便秘状態にあり」というニュースが届きました。しかも「その保護者のうち約32.0%が子どもが便秘状態にあることを認識していない」ということが明らかになったのです。
朝食習慣との関連も
NPO法人日本トイレ研究所(東京都港区)が全国の小学生4833人を対象に今年3月に実施した「小学生の排便と生活習慣に関する調査」によるもの。
2割の小学生が便秘状態!
便秘の小学生の保護者の認識は?
さらに、小学生の2人に1人(49.7%)が学校でうんちをしないと回答し、2人に1人(52.8%)が学校でのうんちを我慢し、うんちが3日に1回以下しか出ない子のうち危機感を持っている子は21.6%に留まること、便秘状態の子どもはそうでない子どもに比べ、睡眠時間が短い、朝食を毎朝食べないなどの傾向も明らかになりました。
小学生の便秘の実態に、長年子どもの代謝・栄養、消化管機能の臨床研究に携わり、さいたま市立病院排便外来で子どもの便秘の治療に当たっている中野美和子小児外科部長は「約20%という数値は、成人女性と同じ程度に小学生が便秘状態にあることを示し、極めて憂慮すべきこと」と指摘します。
深刻な病気につながる恐れも
便秘とは、腸内に便が長時間留まった状態ですが、「お腹がつらい」だけの問題ではないのです。便秘状態が続くと腸内フローラが悪化していわゆる悪玉菌が増え、アンモニアや硫化水素などの有害物質や発がん物質が発生してしまいます。「最近、便秘と心血管疾患の関連の可能性や、腸管フローラと生活習慣病の関連のデータが報告されていて、便秘による直接の症状のみならず、長期の便秘状態が全身状態にもたらす影響も心配されます」(中野先生)
子どもやその保護者が便秘を問題として認識していないために、便秘が長期間持ち越されるのではないかという心配もあります。便秘の子どもすべてが便秘状態を大人になるまで持ち越すとは限りませんが、調査の結果から特に女性で持ち越していることが推察されます。子どもの便秘は、早急に解決するべき問題だといえます。
普段の生活から改善を
「子ども自身は、便秘状態が続いても、慢性的であるために、自覚することは難しいし、自覚しても、保護者が関心を持たなければ、訴えることはできにくい。また、小児期に排便に関して無関心な環境にあれば、成人後も同様のことが続くことが予想されます。食育と同様に、排泄に関しても、保護者と子ども自身の双方に教育が必要でしょう」(中野先生)
では、便秘の解消に大切なことは何でしょうか。中野先生は、便意を感じたときに我慢しないことが、便秘の予防、治療に最も重要だといいます。「排泄、睡眠、食事などの基本的生活習慣はお互いに関連しています。よい生活習慣を身に着けていれば、当然、排便状態もよくなりやすい。ある程度以上の便秘症では、生活習慣の改善だけではなおらないが、軽度の便秘状態の改善、便秘の予防、便秘治療の一環として、極めて大事なことです」(中野先生)
取材協力/日本トイレ研究所(http://www.toilet.or.jp/)