乳製品を食生活の重要な糧(かて)としている中央アジアの遊牧民族が暮らす地域では、ヨーグルトは当然みんなの大好物。
家庭で作られる「アイラン」
ヨーグルトは、現地では「アイラン」と呼ばれている。夏の間、牛のミルクがたくさん取れる時期に盛んに食べられる。酸味が強くとても滑らかな発酵乳。しかし、これは夏の間に食べ切ってしまうのではなく、寒さが厳しい冬に向け保存食へと加工する。白くて丸いもので「クルト」という。
作り方は、発酵させたミルク(すなわちヨーグルト)に塩を混ぜて、水を切る。水を切るのは簡単、大きな袋に入れて、草原に一日中放置しておくだけ。大自然と気候風土に任せた大らかさに感服!
また、抜けた水分は大地が吸い取り、やがて草が生えるための栄養となり、草は牛の餌となりミルクとなる。
地面に袋ごと放置
そして、水分が抜け濃縮されたヨーグルトの塊を、1つずつ一口大に成型し、天日に干して乾燥させたら出来上がり!
降水量の少ない乾燥した土地だからこそ、腐敗を気にせずに作ることができる。出来上がったクルトは、しっかりと乾燥しているため、噛むとなかなか固い。発酵乳が濃縮された強い酸味に塩味がきいている。
持ち運びが簡単なので、現地ではスナック菓子のような感覚で食べられている。まさに、モバイルフードとしての発酵乳だ。
バザールのクルト売場
丸い形がメインだが、細長いものやねじれたものなど、形にもバリエーションがある。また、作られた場所によって白さのトーンも様々。バザールではたくさんの種類のクルトが売られているが、お気に入りのクルトを見つけるまで色々と試すのも楽しい。
中央アジアに行く機会があれば、通なお土産としてクルトを選びたい。
取材/文:市川亜矢子