「子ども食堂」という取り組みが全国各地に広がっています。両親が共働きだったり、ひとり親だったりで食事の支度がままならない子どもや、経済的事情で満足な食事がとれない子どもたちに、地域の大人らが中心となって食事とだんらんの場を提供する活動です。核家族化や地域のつながりが薄れていると言われる中、「子ども食堂」を子どもたちと大人たちの食を通じた交流の場として、世代を超えた関わり合いや助け合いにつなげていこうという試みも始まりました。
北海道函館市で19日、「はこだてこども食堂」の最初の夕食会がありました。同市本通1丁目の本通町会館に集まったのは、子ども17人と保護者5人。ボランティアのスタッフ16人と一緒に、汁物やおかずの調理を手伝い、みんなで「いただきます!」と食卓を囲みました。食べ終わると、子どもたちは積極的に後片付けも手伝ったそうです。
当日の献立
実行委員会代表の鈴木辰徳さん(40)は近くの八百屋「すず辰」の店主。3児の父でもある鈴木さんは昨年、首都圏などで食事に事欠いたり一人ぼっちで夕飯を食べたりする子どもたちが増え、「子ども食堂」を開く動きが広まっていることを知りました。「野菜という食物を扱う八百屋として、子どもたちの父として何かできないか」と思い、今年1月、地元の北海道新聞のコラムに「こども食堂をやってみたい」と書いたところ、農家やパン屋、シェフをはじめとして多くの読者から賛同の声が寄せられたそうです。
「みなさん、子どもたちのために何か出来ないかという思いがあった。だけど、自分一人では難しいと思っていた。コラムをきっかけにそういう人たちが集まった」と鈴木さん。ボランティア20人ほどで実行委員会を立ち上げ、メニューや作業手順などの打ち合わせを重ねてきました。趣旨に賛同する農家などから野菜などの食材や調理器具も集まりました。
メニュー会議の様子
鈴木さんは「子どもの貧困や孤食を何とかしたいというのも、もちろんあります。ただ、それだけではありません。今は地域の大人が子どもに声をかけただけで不審者とみられかねないように、地域の関係性やつながりが薄れていると感じます。一緒にご飯を作ったり食べたりすることで、困っている子どもがいたら大人が『おせっかい』をやける関係をつくっていきたい。そんな交流を通じて、子どもたちが生きる力を培う手助けになれば」と話します。大人と一緒に料理をすることで、子どもたちも自分でご飯をつくれるようになればいいな、と鈴木さんは考えています。
「はこだてこども食堂」は、毎月第3木曜日の16時から19時頃まで。食費は4歳から小学生が100円、中学生から大学生が200円、保護者は500円。問い合わせは「すず辰」内の実行委員会(0138-76-9865)へ。
「子ども食堂」は2012年ごろ、東京都内で始まったと言われます。地域のボランティアたちで運営され、経済的事情で十分な食事がとれない子どもに栄養バランスのとれた食事を低価格か無料で提供し、親が仕事などで不在のため一人ぼっちで食事をする子どもに、みんなで一緒に食卓を囲む機会をつくることが主な目的です。
昨年4月には全国規模の連絡組織「こども食堂ネットワーク」が発足しました。宮城県石巻市では昨年11月、県内初の子ども食堂が活動を始め、滋賀県ではボランティア団体や社会福祉法人が中心となり、2018年度までに県内300ヵ所の開設を目指しているそうです。九州でも4月に「こども食堂サミットin九州」が開かれるなど、取り組みは全国に広がっています。
厚生労働省によると、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合は2012年に16.3%と過去最悪を更新しました。子どもの6人に1人が貧困状態に置かれている計算で、ひとり親世帯に限ると54.6%と、状況は一層深刻になります。
支援を必要としている子どもや保護者らに、どう手を差し伸べるか。今後は「子ども食堂」の存在をより広く知ってもらうことが課題となりそうです。
※「こども食堂ネットワーク」:http://kodomoshokudou-network.com/