日本人とサトイモの関係
次にイモ(芋)です。イモは人類にとってもっとも付き合いが長い植物で、地球上のあらゆる民族の祖先が、原始時代から今日までイモ類にはお世話になってきました。
日本人にとってのイモは、古くからサトイモが中心でした。サトイモは、里のイモと呼ばれるように、山のふもとにある集落(里)を代表する食べものだったのです。そのため、 日本各地には、サトイモに関する民俗習慣(神道の儀式や農耕儀礼での登場など)が驚くほどたくさん残されています。
ほかにはヤマノイモ(自然著・じねんじょ)、トロロイモ、クワイなどが、古くからよく食べられていました。イモの生食は世界中でも珍しいのですが、昔から日本ではヤマノイモやトロロイモをすりおろしてご飯にかけて生食するほか、サトイモやヤマノイモの皮をむいて短冊切りにし、三杯酢で生食する食べ方もあります。
ヤマノイモ・トロロイモは「山薬」
ヤマノイモやトロロイモは、古くから「山薬」と呼ばれるほど、滋養強壮食とされ珍重されてきました。食べると口の周りにヌラヌラが付いてかゆくなるのは、アルカロイドいう成分で、これが精力の素になります。むろん男性だけでなくスタミナ源として、夏バテ防止などに家族そろって食べられてきた食物です。乾燥して粉末にし、蕎麦のつなぎ、 はんぺんの材料、菓子の原料としても使われています。
救荒食品としてのイモは、こうした古来からのイモ類ばかりではなく海外から入ってきたサツマイモとジャガイモが代表選手です。デンプンの塊であるサツマイモやジャガイモは、これからも主食に匹敵する食べものとして、 非常時で飢餓を救い、日本人の食生活を支えていくことでしょう。
小泉武夫