日本人は粒食民族
日本民族が大豆とともに生きてきたということを、少し別角度から考えてみましょう。
穀物を、そのままのかたちで煮炊きして食べることを粒食(りゅうしょく)といいます。これに対して、粉状に挽いてから調理して食べることを粉食(ふんしょく)といいます。世界の食文化を調査してみると、ヨーロッパやアメリカ、西アジアなどの小麦を主食とする国々は“粉食文化”です。東南アジアから東側になると、粒食と粉食とが混在する“粒粉食民族”になります。そして、日本はうどんや蕎麦などの粉食も見られますが、基本的には典型的な“粒食民族”です。
日本の鍋や釜などの調理器具は、底の深い形状のものしかなかったということは水とともに発達した日本の食文化の中でも解説しました。深い鍋というのは、粒を煮るための道具でもあります。そして、粒食の文化が発達した背景を探っていくと、粒という“かたち”を尊ぶ思想が日本人の心の中にあったことがわかります。
粒というのは、言い方を換えれば“丸い玉”です。日本民族は、太古の昔から丸い玉には霊が宿ると信じてきました。その原点は、原始宗教における天道(太陽)信仰にあると考えられています。国旗になっている「日の丸」も、太陽という丸い玉を「日出国(ひいずるくに)」の民族の象徴として表したものです。
(続く)
小泉武夫
※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。
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