大豆を加工する偉大な食文化
大豆という植物が持っている生きていくための知恵は驚異的ですが、大豆を食べるための人間の知恵もまた、あっぱれなものです。ただ煮て食べるだけでなく、日本人は大豆を原料にして、さまざまな食品を生み出してきました。
味噌、醤油、豆腐、湯葉、高野豆腐、納豆−−これらを私は、日本人がつくった“大豆六大食品”と呼んでいます。そのどれもが、日本の食文化を大きく左右する偉大な発明だったといっていいでしょう。
栄養価の高い大豆は、当然のように保存することが考えられました。味噌や醤油は、煮た大豆に塩を加えて保存しようとしたことがきっかけで生まれた食品です。味噌の製造法は中国からも伝わっていましたが、米麹を使ったつくり方は、日本独自のものです。
「TOFU」の世界進出
大豆を水に浸してから摺り潰し、水で煮て豆乳にしたのも、大豆の食べ方を広げる画期的な調理法でした。大豆を飲めるように加工したことは、固形物が食べられない病人や赤ちゃんでも、大豆の栄養を補給できるということです。実際に、昔は乳の出がよくないお母さんが、母乳代わりに豆乳を赤ちゃんに与えることがよくありました。
その豆乳を、にがりで固めたのが豆腐。奈良時代、中国から入ってきたこの食べものは、日本に入ってきてからは進化して、 今では日本が生んだヘルシーな食材として、「TOFU」は外国のスーパーマーケットでも売られるほどになっています。
小泉武夫
※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。
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