小林博先生が座長を務めるFBRA(ふぶら)学術研究会は、玄米酵素の抗酸化作用、抗がん作用を動物実験で証明してきたが、さらに多彩な健康効果があることも確認したという。がん研究65年余、90歳の小林先生は今も(財)札幌がんセミナーの事務所に毎日出勤している。玄米酵素の健康効果と合わせて長寿健康法もうかがった。
「FBRA(ふぶら)学術研究会」で多彩な研究
Q/FBRA(ふぶら)学術研究会は、さまざまな分野の研究者が参加して玄米酵素の健康効果を検証しています。どんなことがわかりましたか?
「FBRA(ふぶら)学術研究会は1998年に立ち上げ、この20年近くで国際的に権威ある専門誌に英文論文が25本も掲載されるまでになりました。みなさんに関心がある分野で言えば、腸内の善玉菌を増やす効果があります。大西克成先生(徳島大学名誉教授)たちのグループが検証してくれました」
「大西先生は、ラット(実験用動物)に玄米酵素を含んだ餌を与えると、腸内の善玉菌の代表である乳酸菌がどれだけ増えるかという実験をしました。すると、3週間後に3倍、12週間後に6倍も乳酸菌が増えることがわかりました」
「人の腸内細菌は100〜3000種類、100兆〜1000兆個もあると言われています。実験はラットの結果ですが、その腸内細菌のうち乳酸菌が占める割合は、普通食だけなら2%でしたが、玄米酵素を5%含む餌を与えたグループでは4%、玄米酵素を10%含む餌を与えたグループでは14%近くに増えたのです」
*玄米酵素(FBRA)の詳しい研究データの解説はこちら
健康寿命を伸ばすには予防から
Q/玄米酵素には他にどんな健康効果があるのでしょうか?
「潰瘍性大腸炎の動物モデル実験では、病変の発現を抑えました。また、がんの原因ともなる慢性炎症を防ぐ抗炎症作用が実証されているなど、健康効果は多岐にわたります。詳しい研究成果は『ふぶらぼ』というサイトでも解説しています。これまでは動物実験で検証したものですが、今後は人への健康効果の研究にも取り組みたいと思います。近々、人間の不妊症への効果の研究にも着手する予定です」
がん研究60年を超える小林博先生
Q/こうして見ると、玄米酵素は万能な健康食品という感じですが。
「どんな健康食品でも、あるいは薬でも、健康法でも、病気を完全に予防することは難しいと私は考えています。人間にできることは、病気になる時期を少しでも遅らせることです。これなら出来ます。たとえば、40〜50代でかかるがんと、80〜90代でかかるがんでは、患者さんや家族にとって意味がまったく違ってきますね。玄米酵素で、年をとっても周辺の方々に迷惑をかけることなく、生き生きと生活できる健康寿命をのばすことができればいいですね」
国内外の子どもたちに健康教育
Q/小林先生は、スリランカの子どもたちに健康教育を続けているとうかがっています。
「私がスリランカで健康教育を始めたのは1998年。当時スリランカでは口腔がんが多発していると聞き、予防教育が必要だとスリランカに行きました。原因は昔から続く噛みタバコの習慣です。この習慣を変えようと努力しましたが効果が上がりません。そこで思い立ったのが子どもたちへの健康教育です。子どもたちは私たちの意図をよく理解してくれます。そのうち子どもたちが自発的に大人たちに、『噛みタバコを止めよう』と言いはじめました。その結果、徐々に喫煙率が下がり、健康にも関心を持つようになりました。昨年もスリランカに行きましたが、数えてみたらこの19年で44回行っていました」
「現在、スリランカでやってきたことを日本でもやろうと、子どもに”がん教育”を行っています。がん予防をテーマに、“子どもが大人を変えていく”という趣旨のDVDを製作して、各地の学校でも上映してもらっています。日本人の平均寿命は伸びていますが、健康寿命は余り伸びていない。健康寿命を伸ばすには子どもの時からの健康教育が大切ですね」
スリランカで健康教育を続けている
90歳の健康体操
Q/小林先生は90歳の今も現役で活躍しています。健康法を教えていただけますか?
「特にございません。すべて天命と思っております。強いて言えば生きる目的があることでしょうか。90歳を超えても毎日事務所に出て、がんの患者さんの相談にのり、がん予防の啓発活動に取り組んでいます。やりがいのある仕事を持つことで、元気でいられると思います」
「健康法は、あえて言えば毎日やっている朝の体操です。朝は起きると新聞に目を通したあと、熱いシャワーを浴びてから、30〜40分かけて自己流のストレッチと筋力運動をしています。年齢を重ねると体が固くなるし、筋力が落ちますから、60代から始めました。食事で気をつけていることは、偏食せずにバランスよく何でもよく噛んで食べること、そして食べ過ぎないことです。もちろん、玄米酵素を毎日摂取しています」
「余談になりますが、私は最近、『残る人生、あと30日!』と自分に言い聞かせています。残された日は限られているのだから、何をするべきか。そう考えると、これまで大切だと思っていたことが実はそうでもなく、逆に平凡なことの中に貴重なものが多くあることに気づきました」
【小林博】
こばやし・ひろし/1927年札幌市生まれ。医学博士。52年北海道大学医学部卒業。57年医学博士。59〜61年米国国立がん研究所に留学。66年北海道大学教授。元日本癌学会会長。現在、同大学名誉教授。公益財団法人札幌がんセミナー理事長。『がんの予防・新版』(岩波書店)、『がんに挑む がんに学ぶ』(岩波書店)、『がんを味方にする生き方』(日経プレミアシリーズ)、『人間腫瘍学』『がんの未来学』『なぜがんと闘うのか』(いずれも札幌がんセミナー発行・コアアソシエツツ発売)など著書多数。90年紫綬褒章を受賞。
小林先生のこれまでの著書の一部