今、改めて注目される手づかみ食べ
近年、日本の若者に偏食や引きこもりが増えています。これらの原因の根本に、離乳食期の食事との向き合い方が関係していると考える説があることをご存知でしょうか。
【大反響記事が待望の書籍化!『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?』好評発売中!】
離乳食といえば、お母さんがスプーンを持って「あーん」と食べさせてあげるのが一般的です。子供の意欲を育むために手づかみ食べを取り入れるお母さんは、手づかみできるメニューを1品用意することもあります。しかし手づかみ用のメニューでないものに赤ちゃんが手を伸ばしたら、多くのお母さんは「汚れるからダメよ」と注意することでしょう。
埼玉県にあるどんぐり保育園は、0歳児から離乳食は基本的に全て手づかみで食べさせるという特色ある保育を行っています。どんぐり保育園創設者である清水フサ子さんにお話を伺いました。
手づかみ用のメニュー
食べることは生きること
「自ら食べ物を口に入れるというのは、その子の大切な意欲なんです。口をあーんと開けて食べ物を入れてもらうのを待っているのは、決して主体的ではありませんよね。食べることは生きることと言われるように、食と向き合う姿勢はその人の生き方に反映されます。だからこそ、意欲を削ぐ“汚しちゃダメよ”ではなくて、“自分で食べて偉いね”と声をかけてあげたいものです。もちろん赤ちゃんですから散らかしますよ。ですからうちの園ではテーブル全体がお皿だと考えて、テーブルごと洗って清潔にしているんです。赤ちゃんはテーブルにお野菜を落としても、それをまた拾って食べています。こうやって豪快に離乳食を食べた子は好き嫌いなく、食べることが大好きになるんですよ」と清水さんは語ります。
テーブル全体をお皿として考える
手の指は突き出た大脳
そうは言っても手づかみ食べは汚れますし、お行儀もよくないですよね。母親としては、正しくきれいに食べるというしつけの方面も気になります。
「手づかみはお行儀が悪いとか、うちの子はいつまでも手づかみでどうしようとか、そんなことは気にしなくて大丈夫ですよ」と清水さんは笑います。
「手の指は突き出た大脳と言われるくらい、脳の発達に大切な部分なんです。最初は全部の指を使ってギュッと握るように食材を持ちます。それが食材というデリケートな物を手づかみ食べしているとどんどん指の機能が発達して、親指と人差し指や中指を使って食材をつまめるようになっていきます。こうして感覚器官が発達すれば、問題なくスプーンもお箸も使えるようになるんです。だから焦って成長段階を飛ばしたりせず、一つひとつの発達段階を大切にしてあげてほしいと思います。指をつかって食べるということは知的な発達につながっていますから、心配なくお行儀の方も育っていきますよ。それにすごく散らかしてしまう期間もそう長くはありません。子供はすぐに育ちますから」
床に新聞紙を敷いて、テーブル全体をお皿だと考えて豪快に手づかみ食べで離乳食。「意欲が育って、脳も育って、好き嫌いもしなくなる」というなら、頑張って試してみる価値がありそうです。
【清水フサ子さんプロフィール】
社会福祉法人どんぐり会どんぐり保育園創設者。現在はどんぐり保育園とどんぐりっこ保育園にて子供たちの成長を見ながら、若手の保育士育成や子育て中のお母さんのために講演活動などを精力的に行っている。
【大反響記事が待望の書籍化!『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?』好評発売中!】