田植えや稲刈り、野菜の収穫や乳しぼり、地引網といった農林漁業の体験をしたり、食品加工の工場見学や料理教室など食育に関するセミナーに参加したりすると、日々の食事でも栄養のバランスに気を配る傾向が高まることが農林水産省の調査で分かりました。こうした「食育プログラム」が食への関心を高めることにつながるとして、農水省も啓発活動の支援に乗り出しています。
調査は昨年8月、20歳以上75歳未満の男女1万人を対象に、インターネットを通じたアンケート形式で実施しました。食生活の実態や消費活動、食育への関心度などを調べるのが狙いです。
調査結果によると、1週間を通じた朝食、昼食、夕食(計21回)で、主食・主菜・副菜の3つがそろった食事を半数以上(11回以上)実践しているのは、全体では50.7%にとどまりました。しかし、農林漁業体験に参加したことのある人についてみると、57.2%が実践し、5年以上前から続けて参加している人では74.5%が実践していると答えました。
また、料理教室や工場見学などの食育セミナーに参加したことのある人では、61.3%が主食・主菜・副菜のそろった食事を半数以上実践していると答え、5年以上前から続けて参加している人では78.8%に達しました。
初めて「食育白書」を公表
調査では、参加してみたい食育プログラムについても訊ねています。男性では、食品加工の工場見学(30.2%)、農業者の指導のある体験農園・市民農園(13.8%)、生産者と交流する田植え・稲刈り・野菜収穫などの体験(12.9%)が上位を占め、女性は、工場見学(30.3%)、観光農園などでの収穫体験(18.0%)、収穫物を使った食・加工体験(17.4%)の順となりました。
農水省の消費者行政・食育課の担当者は「食育プログラムに参加することで食への理解や関心が深まり、食生活への意識が高まっている」とみて、「気軽に参加できる工場見学や料理教室、体験農園といったプログラムが様々な地域で広まるように、情報発信などを支援していきたい」と話しています。
こうした取り組みとして、5月には、国として食育の現状や取り組みについてまとめた初の「食育白書」を公表し、地域での効果的な食育の推進に役立ててもらう目的で「食育実践ガイドブック」も作成しました。
政府が策定した2020年度までの第3次食育推進基本計画では「農林漁業体験をした国民の割合」を現在の36.2%から40%以上にするなどの数値目標を定めています。この達成に向けた取り組みの一つに、農林漁業体験民宿があります。全国の自然豊かな地域の民宿に泊まり、地域の人々と交流し、文化にも触れながら農林漁業体験ができる機会を提供するものです。
夏休み、家族の思い出づくりに農林漁業体験に汗を流しながら、食について考えてみるのも貴重な経験になるかもしれません。
※食育白書:http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/johokan/160517.html
※食育実践ガイドブック:http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/torikumi/h27_guide.html
※農林漁業体験民宿の情報:http://kouryu.or.jp/gt/inn/jdr0280000000pap.html