日本は世界有数の発酵食品天国
発酵食品を口にする食文化は世界中にありますが、たくさん食べている地域を地図上の分布図で示すと、際立っているのは2ヶ所です。それは、東南アジアと東アジア。
今でこそ発酵食品は人の手でつくられるようになりましたが、そもそも発酵という現象は微生物が子孫を増やすために行っていた自然界の営みです。当然、発酵には気候が大きく影響します。微生物が活発に働くためには、温度と湿度が重要な条件になります。東南アジアや東アジアのように、温暖で湿気の多いところほど、発酵には適した環境になるわけです。
その中でも、日本は発酵食品大国といえます。別な言い方をすれば、日本は微生物天国なのです。微生物(菌)の大きさは、種類にもよりますが、多くは0.5ミクロン程度。1匹が1ミリの2000分の1の大きさです。学問的には菌は細胞の数で数えますから1個と数えますが、小さくても1つひとつが親からもらった遺伝子を持った生物なのですから、私は一般の人に話をするときは「匹」という単位を使います。
私たちの体には1人あたり4兆匹もの微生物がいる
さて、微生物天国に住む私たち人の体には、いったい何匹の微生物が住み着いているでしょうか?大人1人の体には、約4兆匹の微生物がいます。「毎朝シャワーを浴びているから私は清潔よ」という若いお嬢さんでも、脇の下を顕微鏡で調べれば、切手くらいの面積にサルシナという細菌が300万匹くらいこびりついているはずです。目には見えませんが、私たち人間の体は微生物だらけなのです。
そんなに微生物がうようよいるなんて嫌だなァ、なんて思わないでください。微生物がたくさんいるおかげで、日本人は数々の素晴らしい発酵食品を手に入れることができたのです。
小泉武夫
※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。
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