煎り酒(いりざけ)を知っていますか。煎り酒とは、酒に梅干、鰹節を入れて煮詰めた調味料です。室町時代末期に考案されたといわれ、醤油が普及する江戸時代中期までは広く用いられていました。醤油ほど強い個性を持たず、素材の風味と色あいも損なわないので、スズキ、鯛、キス、ヒラメ、カレイなどの白身魚や貝類の刺身には相性抜群の調味料です。
小泉センセイも絶賛、煎り酒の魅力
小泉センセイも「土鍋に1升の酒と梅干、鰹節を一掴みずつ加えて、1升の酒が4合になるぐらいまで煮詰め、煮詰めたものを冷まして布で漉(こ)す。こうして煮詰めたものは、カルボニル反応により琥珀色になり、日本酒のコク、梅干の酸味、鰹節からのうまみが溶け込んだとろみのついた液体になる。ここに、醤油より塩分が強くない程度まで焼き塩を加えていくと出来上がる。煎り酒にわさびを入れると鶯色(うぐいすいろ)になるように、色合いも綺麗である。また、梅干の効果で、刺身を生臭くなく食べることが出来る」と煎り酒の魅力を紹介されています。
煎り酒を作ってみよう
煎り酒づくりの材料は、手軽に手に入るものばかりで作り方も簡単です。ただし、シンプルな分、おいしく仕上げるために材料にはこだわりましょう。
【材料】卓上の醤油さし1本分ぐらいのできあがり分量
・純米酒…450ml
※純米酒だとまろやかに仕上がる
・梅干…1~2粒
※人工的な甘みの入っていない、塩と紫蘇で漬けこんだ無添加のもの
・鰹節…15g
・塩…小さじ1/2程度(梅干の塩味による)
※にがりが入った天然塩
【作り方】
1./鍋に純米酒と梅干、鰹節を入れて弱火で煮詰める。
2./1が半分以下になるぐらいまで煮詰まったら、冷ましてから布巾かペーパータオルで濾す。
3./2をなめて塩味を確認し、醤油より塩分が強くない程度まで塩を加える。
4./琥珀色で少しとろみがついた煎り酒が出来上がる。写真の左は梅干入り、右はわさび入り。桃色と薄緑色が食欲をそそります。桜鯛と生蛸の刺身をいただきます。
5./煎り酒を作った後の鰹節と梅干を使って梅鰹の佃煮を作る。梅干を取りだして種を取り包丁でたたいて細かくし、鰹節と一緒に鍋に戻す。塩加減を見て醤油大さじ1/2~1、みりんを少々入れて水分がなくなるまで煮て出来上がり。
梅鰹の佃煮
煎り酒はなんとも深い味です。淡白な白身の魚の味を損なわないのにコクがある、醤油とはまた一味違った風味があります。残った鰹節と梅干も無駄にならずに簡単にできる梅鰹の佃煮も、ご飯のおかずにお酒のアテにと、とてもおいしくいただくことができます。