地中海料理との相性アピール
愛媛県産の日本酒をもっと知ってもらおうと、県内43の蔵元が連携して統一ブランドで売り込みを図っています。ブランド名は、スペイン語で「海」を意味する「mar(マール)」。素材を生かし、健康にも良いと人気の高まっている地中海料理との相性を基準に、毎年10-15程度の県産銘柄を選びます。海をモチーフにした鮮やかなラベルと、食との相性を重視してきた品質の高さで愛飲家にアピールし、販売増につなげる狙いです。
青い海と1年を通して温暖な気候の地中海と瀬戸内。食も豊かな魚介類や柑橘類などを使い、素材の良さを生かしている点で共通しています。地中海料理は、和食とともにユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。「これまでにない新たな日本酒の楽しみ方を提案したい」。「mar」は、そんな愛媛の蔵元たちの思いから生まれたそうです。
愛媛の酒「mar」
「mar」ブランドは2012年に発足しました。毎年、専門家を招き、県産の酒米で仕込んだ銘柄を中心に、「白身魚」「生ハム」「オリーブオイル」の3部門で、それぞれの料理に最適な一本を選びます。選ばれた銘柄は、「mar」の統一ラベルを貼って売り出されます。
第5弾となった2016年は、専門家による一次審査に加え、公募で選ばれた女性と県内在住の外国人による二次審査で、計15本が選ばれました。淡白な白身魚には「酸味を備えたみずみずしい味わい」、オリーブオイルを使った料理には「ふくよかな味わい」などが基準となったそうです。
スペインのメディアも大きく取り上げ
「他県の酒どころの銘柄に注目が集まる中、愛媛の日本酒は品質の高さには自信があっても認知度がいま一つだった。地中海料理に合ったお酒という、日本酒らしからぬコンセプトで知名度を高めたかった」。県酒造協同組合の担当者はそう説明します。スペインのバルセロナで、「愛媛県産の銘酒と地中海料理のマリアージュ(組み合わせ)」と銘打ったイベントを行った時には、イベリコ豚のハムや新鮮な魚介類を使った料理との相性の良さに、地元メディアでも「新鮮な驚き」「絹のような飲み物」などと大きく取り上げられました。独自のブランド戦略で海外からの引き合いも年々増え、蔵元の供給量を上回る注文が寄せられるまでになったそうです。
蔵元の一つ、創業140年を超す「桜うづまき酒造」からも、「白身魚」「生ハム」のそれぞれの部門で純米酒と純米吟醸が選ばれました。篠原成昌社長は「食に合った酒造りに取り組んできたことが評価されたのだと思います。審査で選ばれるのは、やはり作り手にとっても励みになります」と話します。
県酒造組合の担当者は「愛媛の日本酒の知名度アップにつながったと思います。これからは各蔵元がどうやって売り込んでいくか、組合としても個々の蔵元をどう支援していくかが課題になります」と話します。今後は、マダイや地鶏などといった県産食材との組み合わせでも、「愛媛の銘酒」をアピールしていく方針です。
「mar」のウェブサイト: http://www.ehime-mar.jp/